著者
永井 克也 谷田 守 福島 洋一 山野 俊彦 新島 旭 前田 景子 奥村 宣明 堀井 裕子 沈 嬌
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.209-216, 2009 (Released:2009-08-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1

筆者らはこれ迄ラットを用いて,低血糖状態,食品,香りや音楽などの種々の体内外の環境刺激が自律神経制御を介して様々な生理機能に影響を与えることを明らかにしてきた.乳酸菌に関しては,1)Lactobacillus Johnsonii La1(NCC533)のウレタン麻酔ラットへの十二指腸投与が副腎や腎臓を支配する交感神経を抑制し,胃を支配する副交感神経を興奮させて血圧を低下させ,無麻酔ラットへの投与が食欲を促進する,2)Lactobacillus paracasei ST11(NCC2461)のウレタン麻酔ラットへの十二指腸投与が白色脂肪,褐色脂肪,副腎,腎臓などを支配する交感神経を興奮させ,胃を支配する副交感神経を抑制して血圧を上昇させ,無麻酔ラットへの投与が脂肪分解と体温を増加させて食欲や体重を低下させる,などを示す結果を得ている.この際,横隔膜下で迷走神経を切断しておくと,NCC533の十二指腸投与による腎臓交感神経の抑制反応は消失したが,NCC2461の十二指腸投与による腎臓交感神経の興奮反応は消失しなかった.また,NCC533による腎臓交感神経活動の低下と胃副交感神経活動の上昇および血圧低下反応はSCN破壊やH3-受容体遮断剤により消失し,NCC2461の十二指腸投与による腎臓交感神経活動と血圧の上昇がH1-受容体遮断剤により消失する,なども認められた.これらの事実は乳酸菌による自律神経活動の制御を介する生理機能変化に体内時計(SCN)とヒスタミンニューロンが関与すると共に,NCC533の関与する反応には横隔膜下の迷走神経求心枝が関与することを示唆する.
著者
新島 旭
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.41-54, 2001 (Released:2018-05-30)
参考文献数
28

1994年に発見、報告されたレプチンは白色脂肪細胞で生産され放出されるホルモンで食欲を抑制し、消費エネルギーを高めて肥満を防止する物質であることが明らかとなった。その後の研究で視床下部にレプチンレセプターが存在することが証明され、レプチンの食欲抑制効果、自律神経出力への効果は視床下部を介して発現することが示唆された。さらに、レプチンの静脈内投与により迷走神経活動の抑制、交感神経活動、とくに白色脂肪枝、褐色脂肪枝での活動促進が観察され、脂肪分解、熱産生の促進が示唆された。レプチンは自律神経活動を調節することにより異化作用の促進、同化作用の抑制を起こし、体脂肪量の調節に役割を演じている。本稿では上記について概説し、レプチンの作用経路についても考察した。