著者
梶浦 英明 横向 慶子 大野 寿彦
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-144, 1999
参考文献数
26
被引用文献数
3

エタノールは酒類の主成分のひとつでありながら、ヒトにおける味覚の研究報告は比較的少ない。報告により不一致があるが、エタノール自体には苦味、甘味があり、ビール、ワインなどのアルコール飲料の中では苦味を強める傾向がある。動物においてはエタノールの味の感じ方に種差があり、マウスでは系統差がみられる。エタノール濃度は溶液の粘度に影響し、「こく」と正の相関がある。
著者
篠原 一之 諸伏 雅代 船橋 利也 美津島 大 貴邑 冨久子
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-17, 2000-04
被引用文献数
1

ヒトは、生活を豊にするために植物などの自然な匂いや香水などの人工的な匂いを用いているが、自然に体から放出される匂い(体臭)を介してもさなぎまな生物学的情報を交換している。例えば、体臭は性別、親子、同胞等の異なる生物学的カテゴリーを識別する際になんらかの役割を果たしているし、性行動、生殖生理にも影響を及ぼしている。そこで、これら体臭を介したコミュニケーションについて解説する。
著者
梶浦 英明 横向 慶子 大野 寿彦
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-144, 1999 (Released:2018-05-30)
参考文献数
26
被引用文献数
2

エタノールは酒類の主成分のひとつでありながら、ヒトにおける味覚の研究報告は比較的少ない。報告により不一致があるが、エタノール自体には苦味、甘味があり、ビール、ワインなどのアルコール飲料の中では苦味を強める傾向がある。動物においてはエタノールの味の感じ方に種差があり、マウスでは系統差がみられる。エタノール濃度は溶液の粘度に影響し、「こく」と正の相関がある。
著者
真貝 富夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.33-40, 1999-04
被引用文献数
6

「のど越し」という言葉はしばしば使われるがその実体はかなり複雑な感覚である。のど越しスッキリとかキレがいいと言う時とそうではない時とでは咽頭・喉頭からの神経情報にどのような違いがあるのであろうか。咽喉頭の味覚情報を担う上喉頭神経と舌咽神経咽頭枝は水の刺激に対して高い応答性を示すという特徴がある。この両神経が顕著なのど越しの感覚を誘起するビール、炭酸水、吟醸酒などに対して特徴的な応答パターンを示すという最近の知見を紹介し、「のど越し」との対応について述べた。
著者
杉本 久美子 土橋 なつみ 泰羅 雅登 臼井 信男
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.151-160, 2013-08

口腔内に摂り入れた食物からの味覚情報は、大脳皮質の第一次・第二次味覚野に伝えられて、味が知覚・認知されるだけではなく、意識にのぼらない形で自律神経を介して唾液分泌を始めとする消化器系への調節を引き起こす。それと同時に、大脳辺縁系に送られた味覚情報は快・不快の情動を生じ、その評価結果が摂食行動として表出される。このような味覚刺激に対する生体反応が味の質によって異なるのかという点を調べるため、自律神経の応答ならびに脳波による脳活動の解析を行って検討した。その結果、自律神経活動においては、唾液分泌促進効果のあるうま味刺激で副交感神経活動の上昇がみられたのに対し、一様に嫌われる苦味刺激では唾液分泌促進効果が低く、交感神経活動が上昇すること、ならびに副交感神経活動と唾液分泌量との間には正の相関があることが明らかとなり、副交感神経を亢進させるうま味などは他の消化器にも促進作用を及ぼすが、交感神経を亢進させる苦味は負の調節を行う可能性が示唆された。また、脳波から情動の基本的4感情、すなわち喜(満足感)、怒(ストレス)、哀(気落ち感)、楽(リラックス感)のレベルを解析した結果、甘味と酸味刺激中の満足感の上昇や苦味刺激中のストレス上昇とリラックス感低下など、味質により異なる感情の変化パターンが観察され、この方法を用いて刺激に対する情動変化の客観的把握が可能となることが示唆されたので、本稿で紹介する。
著者
宮奥 美行
出版者
日本味と匂学会
雑誌
味と匂誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.157-164, 2018-05-30
参考文献数
18
被引用文献数
1

カレーのおいしさを構成する要素は、だし、油脂、スパイス・カレーパウダー等の香辛料である。カレーパウダーは、複数のスパイスから構成される。混合後熟成することで、単品スパイスを混合しただけのものとは異なり、カレー製品の香味を増強する役目を持つ。油脂は、その存在状態が変化することで、香味の感じ方を複雑にする。日本における一般的なカレーでは、具在に肉、じゃがいも、人参、玉葱を使用するが、家庭での煮込み及び調理後の時間経過により、具材が、カレー・ソースの成分や状態変化を引き起こし、おいしさに変化をもたらす。
著者
森田 健一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.53-59, 2008
参考文献数
24

It is called "Proustian phenomenon" to recall our memory triggered by odor. The aim of this research is to clear the situation when Proustian phenomenon is occurred, and how we experience during the Proustian phenomenon. One hundred and eleven students participated individually. They were asked to fill in a questionnaire and post it in a box. As results, major four situations when Proustian phenomenon occurred were founded; they were triggered by nature odor, odor of one's family or house, odor of one's special person, and one's impressive odor. For the experience, we can see Proustian phenomenon from five perspectives; the affection, the psychic distance between now and then, the feeling of connection between the odor and the memory, unexpected feeling, and the feeling of wonder and impression. Moreover, the relation between Proustian phenomenon and flash back experience and Proustian phenomenon and Deja Vu experience were indicated.
著者
庄司 隆行
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.163-169, 2009-08

魚たちは、我々が体験することはもちろん想像することも難しい"味物質を鼻で嗅ぐ"という感覚機能を持っている。すなわち、魚類の嗅覚系は水中に溶けた味物質、なかでもアミノ酸を高感度で受容することができる。言うまでもなくアミノ酸類は味覚系でも受容されるから、アミノ酸は魚類にとって味でもあり匂いでもあることになる。しかし、味覚と嗅覚とでは受容器はもちろん中枢への投射経路も全く異なるから、その機能も別々のものであると考えられる。本稿では、嗅覚系のアミノ酸受容が魚たちにとってどのような役割を持つのかを具体例をあげて解説する。
著者
澤野 清仁
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-04
被引用文献数
2

腋臭の特有成分は(E)-3-メチル-2-ヘキセン酸であり、リポフィリックジフテロイドの関与が示唆される。汗臭や足臭は酢酸、イソ吉草酸などの低級脂肪酸がその臭気成分であり、スタフィロコッカス属が関与し、また加齢臭の主たる臭気成分はノネナール等であるが、加齢臭と皮膚細菌叢との関係は、未解明である。これらの体臭を抑制する方法は様々あるが、哺乳類は匂いによって様々な生理学的に重要な情報を伝達しているので過度な清潔指向はヒトとヒトとの匂いによるコミニュケーションを妨げるものと推測される。
著者
赤羽 義章 伊藤 光史
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.117-128, 2007-08

日本海側の広い地域に種々の水産発酵食品が存在しているが、福井県の沿岸や周辺の内陸部ではマサバのへしこやなれずしが伝統的に作られてきた。へしこはマサバを塩漬にした後、これを米糠と合わせて漬け込み、6ヶ月以上発酵させて作る。この地方のなれずしには2種類あり、塩出ししたへしこを原料に用いるものと、生マサバを原料に用いるものがある。後者は、マサバを塩漬けした後、米飯と合わせて、夏期を経て4ヶ月以上発酵させて作る。近年、これらの発酵食品の生産量は増加の傾向にある。へしことなれずしとは製造法が違うだけでなく、呈味の点でもかなり大きく異なる。なれずしは比較的低塩分であり、へしこはかなり高塩分で作られる食品であるが、へしこを多く消費するこれらの地域に高血圧その他の健康障害が多いという報告はない。これらの発酵食品が長年存在してきた背景には、なんらかの食品機能が関係しているのではないかと考えた。生マサバを用いてへしこと後者タイプのなれずしを調製し、一般成分やエキス成分などの変化を調べた。その結果、製品中に多量の遊離アミノ酸や有機酸などの呈味成分に加えて、ペプチドが多量に蓄積することが分かったので、これら食品のエキスを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与し、血圧に対する影響についても検討した。
著者
上田 要一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.197-200, 1997 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
4

昆布だしの呈する特有の"あつみ"成分をオミッションテストにより検索した結果、グルタミン酸、カリウム、マンニットの3成分が有効成分であった。また、ニンニク、タマネギを食品に使用した時発現する"あつみ"、"ひろがり"、"持続性"は、アリイン、S-プロペニルシステインスルホキシド等の含硫化合物による発現する事が分かった。最近、牛肉だし中の"こく"、"あつみ"成分として新規のアミノ酸誘導体及び筋肉タンパク由来の高分子成分が検出されている。
著者
北川 純一 高辻 華子 高橋 功次朗 真貝 富夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.143-149, 2013

「おいしさ」にとって重要な要素である「のどごし」の形成には、咽頭・喉頭領域の感覚が深く関与していると考えられる。しかしながら、咽頭・喉頭領域の感覚についての研究報告はあまり多くない。本稿では、これまでの研究によって明らかにされた咽頭および喉頭領域を支配する神経(舌咽神経咽頭枝と上喉頭神経)の味覚応答特性ついて紹介するとともに、近年、盛んに研究されているTRPチャネルファミリーとのどごし感覚の関連性を検討する。さらに、健康的な生活を過ごすために大切な摂食(嚥下)機能に対する咽頭・喉頭領域からの求心性情報の役割について考察する。
著者
宮澤 利男
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 = The Japanese journal of taste and smell research (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.5-10, 2015-04

食塩は私たちにとって必要不可欠な素材である一方、その過剰摂取は様々な疾病の要因になるとされており、消費者の減塩に対する意識は近年著しく高まっている。そこで我々は、塩味の増強効果を有する天然物を探索したところ、キク科植物オランダセンニチの辛味の主要成分であるスピラントールに塩味の増強効果があることを見出した。本稿では、この塩味の増強作用を、1)官能評価試験、2)行動学的試験、3)神経生理学的試験により測定することで、塩味受容および塩味増強のメカニズム解明に試みることとした。
著者
富永 真琴
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 = The Japanese journal of taste and smell research (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.191-196, 2000-08-01
被引用文献数
2

辛味は、トウガラシの主成分である脂溶性のカプサイシンが三叉神経終末に発現するイオンチャネル型のカプサイシン受容体VR1に結合してカチオン流入から神経興奮が起こることによって知覚される。カプサイシン受容体は感覚神経C線維にのみ発現して辛味を惹起するカプサイシンのみならず痛み刺激であるプロトンや43度以上の熱によっても活性化される多刺激痛み受容体として機能する。遺伝子クローニングされたこの受容体の機能は強制発現系での電気生理学的な解析に加えて受容体欠損マウスの行動解析からも確かめられた。
著者
畝山 寿之 鳥居 邦夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.97-108, 2010-08
被引用文献数
1

日本人が低栄養の危機にさらされていた前世紀初頭に、グルタミン酸塩がうま味物資であることが1千年以上の歴史を誇る伝統食素材(昆布)から発見された。近年、グルタミン酸は味覚を通じて、単に「食べものをおいしくする」だけではなく、摂取後は消化管からの内臓感覚を通じてたんぱく質の摂取や消化吸収など生物が生存していく上で根本的な生理機能に深く関わっている事実が動物実験やヒト介入試験で示されている。そして、昆布以外に世界中の調味料(醤油、オイスターソース、トマトケチャプ、ナンプラーなど)や調味素材(トマト、チーズなど)に遊離グルタミン酸は豊富に含まれていることが分かるにつれ、人類はおいしさを指標に経験的にグルタミン酸を食事に取り入れる食文化として継承し、グルタミン酸のもたらす生理作用の恩恵に授かってきたと考えられるようになった。発展途上国では依然として深刻な栄養不良の問題を抱え、先進諸国においては高齢化・少子化社会による独居や入院高齢者の低たんぱく栄養の問題が深刻化している。本総説では、たんぱく質の摂取及び消化吸収におけるグルタミン酸の栄養・生理学的意義について我々の最近の研究成果を交えて紹介する。そして、日本の発見であるうま味のもつ健康価値とその利用について考える。
著者
武井 啓一
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.133-142, 2013-08

平成17年に施行された「食育基本法」によって「食育」の基本理念が定められ、法的根拠が付与された。これまで、わが国では、「食」と「健康」に関して、栄養中心のアプローチが大半だったが、今後はそれに加え、嗜好すなわち食の味わいや楽しみからのアプローチが必要であろう。子どもが食事を味わい楽しむようになるには、多種類の食品に親しむことや食への関心と味覚などの五感を使っておいしさの発見を繰り返す経験が大切である。そのためには、しっかり噛んで、おいしく、楽しく食べる食べ方を教える味覚(五感)教育が必要であると考えている。ここでは、甲府市歯科医師会が、多職種の連携・協働のもと、5歳の幼児(保育園児)とその保護者を対象にして行ってきた味覚教育の事例を紹介する。
著者
道畠 俊英
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.95-104, 2007-08
被引用文献数
2 1

石川県奥能登地方には、イカやイワシを原料としたイシルと呼ばれる魚醤油が古くから造られている。この石川県の伝統食品であるイシルについて、そのうま味成分や機能性について検討を行った。イシルは全窒素含有量、塩分量ともに高い値を示した。さらにイシルは多量の遊離アミノ酸量を含んでおり、その主な組成はアラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、バリンなどであり、機能性を持つタウリンも多く含まれていた。またペプチド含有量も高く、そのほとんどがグルタミン酸、グリシン、アスパラギン酸により構成されたペプチドであった。機能性においては、イシルには高い抗酸化性とACE阻害活性が確認され、脱塩イシル粉末を給餌した動物試験において血中グルコース濃度や血圧の上昇抑制効果が認められた。従って、イシルのうま味は豊富な遊離アミノ酸とペプチドにより形成され、高い機能性を有する調味料であることが判明した。