- 著者
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新村 一郎
牧 隆俊
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.8, pp.1007-1014, 1989-08-15 (Released:2013-05-24)
- 参考文献数
- 16
神奈川県下の児童・生徒15,156,346名を対象に学校管理下の心臓急死の実態調査と集団心臓検診(就学前児童654,632名,中学1年生276,307名)において検出されるハイリスク心疾患について検討した.学校管理下の急死97例の死因は急性心機能不全60例,器質的心疾患18例(9例は剖検によって新たに検出),脳血管障害14例,熱中症5例であった.心臓急死例の死亡時の身体状況では79%は運動中,21%は安静時と,成人の心臓急死例や心疾患小児の急死例と比較して,運動時急死が特徴的であった.しかも,運動時急死の58%は体育授業中,29%はスポーツクラブでの運動中であった.発症より死亡までの時間は短く,多くは瞬間死であった.比較的時間の長い症例に脳血管障害が多い傾向がみられた.性別では男子が圧倒的に優位であり,加齢による突然死発生率の増加が見られた.今回の検討では小児期における突然死の危険性の高い心疾患としては肥大型心筋症,QT延長症候群,冠動脈病変を有する川崎病,心筋炎,特定の不整脈(心室性頻拍不整脈,高度一完全房室ブロック,洞不全症候群,心房粗動),特定の先天性心疾患などであった.健康とみなされている小児の心臓急死の予防には潜在性のハイリスク心疾患の検出に加えて,発育期のスポーツ医学の常識に叶ったスポーツ指導の重要性が強調されよう.