著者
新村 秀一
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.231-238, 2003-12

近年,経済学部などでは,学生にとって統計の授業が難しく,不人気なため,コマ数の削減や必修科目から選択への格下げが続いている.これに対応し,真に社会に出て役立つ実践的な統計学を,新しい情報化時代の質の高いユーザー教育として再編することを提案したい.私の提案は,以下の3段階の統計教育を行うことである.・ステップ1は,前期2単位科目として,わずか4件の小さなデータを用いて,ヒストグラムと基本統計量(平均,中央値,最頻値,範囲,四分位範囲,標準偏差,四分位数とパーセンタイル,歪み度と尖り度,変動係数),散布図と相関係数,単回帰分析,クロス集計などを教えることである.そのあと,正規分布を偏差値などと関連付け教える.また,実際のデータを用いた分析例の解釈を教えることにすればよい.・ステップ2と3は,後期に情報実習の一環としておこなう.ステップ2は,統計ソフトを用いて一つのデータをどう分析し,出力をどう解釈するかを,操作法とともに統計実習の一環として教える.ステップ3は,課題としてWebやCD-ROMから興味のあるテーマを選ばせ,20頁ぐらいの統計レポートを筆記試験の代わりに提出させる.このような方法を出発点にすれば,データから情報を取り出す楽しさ,統計手法全体が見通せること,など従来の講義科目で得られない成果が期待できる.
著者
新村 秀一
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.31-45, 2007-07-31
被引用文献数
2

Miyake & Shinmura (1978)は,最少誤分類数(Minimum Misclassification Number,略してMMNを判別基準とする最適線形判別関数(Optimal Linear Discriminant Function,略してOLDF)を提案した.この基準は,多くの統計家にとって過剰推定(オーバーエスティメイト)あるいはパターン認識でいうOver Learningが考えられ受け入れがたいものであった.しかし,判別する2群がFisherの線形判別関数(LDF)の理論的前提を満たせば, LDFの誤分類数(Misclassification Number,略してMN)はMMNと等しくなる.そこで,教師データでこの差が大きいほど,この理論的前提より乖離する指標になることが期待される.そこで,ヒューリスティック手法(ヒューリスティックOLDF)を開発し研究したが,計算時間や評価法などで壁に突き当たった(三宅・新村(1979)).新村(1998)は,この問題が数理計画法(MP)の研究者が,計算時間がかかるということで嫌っている整数計画法(IP)で定式化できることに気づき,IP-OLDFと命名し研究を再開した.計算の爆発というブラックホールに分け入り大変であったが,MMNの集合である最適凸多様体でもってこれまで判別分析の理論で説明できないことが幾つか分かった.しかし,「学生の生活実態調査データ」でIP-OLDFの致命的な欠陥が見つかった.今回改訂IP-OLDFというモデルを考えたことで,この問題のほか,計算時間の短縮,最適凸多様体のどの内点を最終的に判別関数の計数に用いればよいか,そしてそれを用いて評価データによる汎化能力の検証が可能となった.これによって,1970年代から延々と行われてきた数理計画法による判別モデル(Stam, 1997)と既存の判別手法の比較を今後客観的に行う目処がついた.