- 著者
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田口 東
- 出版者
- 公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
- 雑誌
- 日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, pp.85-108, 2005-12
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
-
8
本論文では, 東京首都圏の電車を利用する通勤通学客を対象として, 利用者均衡に基づいて, 出発駅から到着駅への交通需要をほぼ時刻表の通りに運行される電車に配分するモデルを提案する.乗客は朝の定期券利用者のうち約700万人を対象とし, 電車はJR線私鉄線合計128路線の始発電車から午前10時台に終着駅に到着する通勤電車のほとんど(約7500本)を対象とする.電車のダイヤおよび交通需要が時間依存である場合を扱うために, 電車の時刻表を基に, 各駅における各電車の発着をそれぞれ頂点で表し, 駅間の電車の運行を頂点間の枝で表してネットワークを作成する.これによって, 確定した離散的な時間の経過を頂点間の移動で表すことができるので, 電車ネットワーク上の移動を計算する問題を静的な利用者均衡配分問題として定式化することが可能となる.そして, 2000年に行われた大都市交通センサスデータからOD交通需要を求めて利用者均衡配分を計算し, 同じセンサスに記録された実際の乗客の移動と比較して計算結果の妥当性を確かめる.その上で, 応用問題として時差出勤による混雑緩和の可能性を調べること, 南北線全線開通にともなう乗客数変化の予測を行って実際の利用数と比較することを行う.ここで提案した手法によって, 首都圏のような広い範囲の公共交通機関を利用する移動に対して, 詳細な検討を行うことができるひとつのツールが得られたと考えている.