著者
新田 幸子
雑誌
広島国際大学看護学ジャーナル (ISSN:13495917)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.53-63, 2019-03-31

ドイツは,日本と同様に少子高齢社会であり,高齢者を在宅で支援するシステムが整備されている.そして,高齢者の医療・介護は,老人介護士が担っている.老人介護士は看護と介護の役割を併せ持ち,医療職として制度化されている.日本では,看護は医療,介護は福祉分野に区別されている.日本もドイツと同様,介護士養成教育に医学的知識を導入した教育内容を構築することで看護職と同等のライセンスをもつことが望まれるが,老人介護士の誕生は日本では未だ聞かない.本報告の目的は,これからの日本における新たな高齢者支援の在り方を考察するためである.今回,ドイツの都市ミュンヘンとケルンの高齢者介護の実態を見学したことを機に,日独の介護保険制度の相違と老人介護士および看護師の養成教育カリキュラムの文献検討を行った.また,ケルンではカトリック大学教員の協力を得て.老人介護士と家庭訪問に同行し,老人介護士の業務調査を行った.これからの日本に期待されることは,介護を受ける者の意思決定の支援,家族だけに頼らない地域との連携や多職種協働を強化していくことが,高齢者の介護や終末期ケアのより良い支援につながることが示唆された.