著者
新田 祥子
出版者
福山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の逆反応もしくはアミノリシスを用いることで、アミノ酸もしくはアミノ酸エステルを重合してポリペプチドを合成する化学酵素合成が注目されている。これまで報告されているポリペプチドの酵素触媒重合に用いられるプロテアーゼは主にエンド型である。一方エキソ型プロテアーゼはオリゴペプチド分解反応を抑制できると考えられることから、エキソ型プロテアーゼ触媒による重合反応はより高分子量オリゴペプチドが得られると期待できる。そこでエキソ型プロテアーゼであるCarboxypeptidase Yを選択し、Benzoyl alanine methyl ester(BzAlaMe)およびleucine methyl ester hydrochlorideを基質に用いたオリゴマー化を試みた。重合反応における反応条件(反応温度、反応pH、基質濃度、酵素濃度、反応時間)がオリゴマー収率に与える影響について検討を行った。逆相HPLCによる分子量測定の結果より、反応時間の経過とともに転化率ならびに分子量が徐々に増加し、反応時間1時間程度で転化率はほぼ一定の値を取った。その間、主鎖中の分解挙動は見られず、分子量分布も1.0に近い値を示した。さらにオリゴマー収率は反応時におけるBzAlaMe/基質仕込み比やバッファーpH、温度といった条件に大きく依存した。重合反応をを妨げるBzAlaMeの加水分解反応は、バッファーpHや温度を制御することで10%程度まで抑えることができた。