著者
嶋田 徹 新発田 修治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.283-289, 1984-01-31
被引用文献数
1

育成地や収集地を異にするオーチャードグラスの多数の品種および自生集団について耐凍性を比較し,北海道で栽培されるオーチャードグラス品種に必要とされる耐凍性の程度を検討した。北海道産の品種系統および導入品種からなる24集団間の比較では,耐凍性は育成地の1月の平均気温と密接な相関関係を示した。北海道産の品種系統のうち,帯広産の2系統は,最も耐凍性が大きかったカナダ産品種と同程度の耐凍性であったが,札幌産の5品種は耐凍性が中位で,一部の北欧・アメリカ産品種と同程度の耐凍性であった。また,北海道各地から収集した27自生集団間の比較では,耐凍性は,1月の平均気温より,15cm以上の積雪が生ずるまでにオーチャードグラスが受ける寒さの程度と関係していた。したがって,多雪な日本海側地域からの集団で耐凍性は小さく,寒冷少雪な太平洋側東部やオホーツク海側地域からの集団で耐凍性は大きかった。また,寒冷少雪地帯にある大規模草地の異なる標高から収集された9集団の比較では,播種されたアメリカ産品種マスハーディの耐凍性が自然選択により増大していることが認められた。これらの結果から,北海道で栽培されるオーチャードグラス品種には,耐凍性で品種の栽培地域区分を行うことが望ましいこと,その際,多雪地帯ではキタミドリ程度の中位な耐凍性で十分であるが,寒冷少雪地帯では,世界的にみても最高程度の耐凍性が必要であることがわかった。
著者
新発田 修治 嶋田 徹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-108, 1986-07-31
被引用文献数
5

世界各地から収集したオーチャードグラスの27品種について,秋季の炭水化物含有率,耐凍性,および雪腐大粒菌核病抵抗性を調査し,これら3形質相互の関連について検討した。初秋に播種した幼植物の越冬前における耐凍性は品種によって異なり,1月の平均気温が低い育成地の品種ほど耐凍性が大きかった(r=-0.707)。幼植物の炭水化物含有率は,いずれの品種も還元糖(RS)<非還元糖(NS)<全糖(TS)<フクトサン(FS)<水溶性炭水化物(WSC:TS+FS)の順に高かった。RSを除くこれら画分と耐凍性との間には有意な正の相関々係があり,とくにWSC含有率との間に最も高い相関係数(r=+0.673)が得られた。また,各画分と乾物率との間にも有意な正の相関々係があり,特にWSC含有率と乾物率との間に最も高い相関係数(r=+0.710)が得られ,乾物率からWSC含有率を推定しうることが示された。17品種の雪腐大粒菌核病の被害率を消雪期に調査する方法で雪腐大粒菌核病抵抗性を検定したところ,北欧産,北米産および北海道産の品種の抵抗性が高かった。耐凍性が高い品種ほど被害率が低かった(r=-0.617)。またNS,TS,FS,WSC(r=-0.657)含有率が高い品種ほど被害率が低かった。これらの結果から,土壌凍結地帯で,冬枯れ抵抗性品種を育成する際には,選抜の指標としてWSC含有率が一つの目安となり,その推定法として乾物率が有効であることが示唆された。