著者
稲垣 俊明 山本 俊幸 新美 達司 橋詰 良夫 水野 友之 稲垣 亜紀 小鹿 幸生
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.172-177, 1995-03-25
被引用文献数
1 2

113歳で生存中の高齢者のなかで日本最長寿者になり, 現在115歳 (1994年9月時) で生活中の女性例の臨床病態について検討した結果を報告した. 社会医学的な面では, 遺伝的因子の関与, 食事は偏食がなくバランス良くとり, タバコ・酒はたしなまず, 睡眠は充分にとり, 青壮年期は農業に従事し, 老年期ではラジオ体操などの適度な運動を行っていた. 精神心理学的, 老年者の総合的機能評価法では, 性格は執着性であり, 107歳まで日常生活動作能力はほぼ自立し, 明らかな痴呆がみられなかった. 医学的には, 血圧は時々一過性の高血圧を示したが, 心電図は完全右脚ブロックであり, 超音波心臓検査は左室機能が保たれており, 末梢血および生化学検査値は赤血球数, ヘモグロビン, ヘマトクリット, アルブミンが軽度の低下, 尿素窒素が軽度の上昇を示したが, 免疫系を含めた他の検査値は正常範囲内であった. 本例は109歳以降, 頻回に呼吸器感染症 (主に肺炎), 尿路感染症を併発しているが, 附属病院に入院し, 適切な医療を受けたことが長寿達成に重要な役割を果しているものと考えられた.