著者
新藤 永実子 佐野 秀樹
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014 (Released:2016-10-04)
参考文献数
17

本研究は,臨床美術アートプログラムが与える心理的影響に,描画への苦手意識をもつ者とそうでない者の間で違いがみられるかどうかを検討したものである。臨床美術とはもともと認知症予防や改善のために開発されたアートプログラムであり,そこで用いられる抽象的対象を表現するアナログ表現というものは,作品にうまい・下手といった技術的評価は存在しない。そのため描画に対する抵抗が少なく,誰にも受け入れやすい表現活動であると考えられる。実験参加者は23名(描画得意群13名,描画苦手群10名)で,アートプログラム実施前後で心理尺度に回答してもらった。本研究では心理状態の変化を“二次元気分尺度”,アートプログラム制作における体験過程の深まりを“芸術療法における体験過程尺度”を用いて測定した。その結果,描画に対して苦手意識がある者でもそうでない者でも,アートプログラムの実施前より実施後のほうが,ポジティブで活力がありリラックスした心理状態へと変化し,アートプログラムにおいて同程度に充実した体験ができることがわかった。