- 著者
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新谷 和幸
- 出版者
- 全国社会科教育学会
- 雑誌
- 社会科研究 (ISSN:0289856X)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, pp.57-68, 2014-03-31 (Released:2017-07-01)
- 被引用文献数
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本稿の目的は,小学校社会科の概念探究学習として,概念の名辞(カテゴリー)に着目し,科学的概念だけでなく,常識的概念も含めて概念を探究する学習(概念カテゴリー化学習)の必要性と,その授業構成方法を明らかにすることである。小学校段階の児童にとって,概念探究学習における命題を探究する学習は,児童の発達段階や小学校社会科の目標の観点から,児童が学習する上で困難な状況があった。それを改善し得る教育内容・方法として,常識的概念も含めた概念の名辞(カテゴリー)とカテゴリー化を用いた学習方法に着目し検討した。その結果,小学校段階において,概念の名辞を認知機能のカテゴリーとして学ぶ重要性や,それを児童が科学的方法で獲得する上で,(1)類推-同定という思考活動,(2)カテゴリーの階層性を生かした包摂的カテゴリー化,(3)反証事例を用いた批判的学習過程,の必要性について明らかにした。以上,小学校社会科の概念探究学習における概念の名辞(カテゴリー)に着目して探究するという,筆者の提唱する「概念カテゴリー化学習」は,児童の発達段階に適した小学校社会科の目標に迫ることのできる科学的な学習方法論であるとともに,中等教育で命題を探究する学習を行うための基盤形成を担う有効な学習方法論でもある。