著者
平口 悦郎 三宅 毅 須永 道明 新里 順勝 小沢 達吉 加藤 紘之 田辺 達三
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.209-214, 1992-01-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

消化管の手術後,縫合不全により形成された瘻孔が難治化し,その対策に苦慮することがある.当科ではフィブリン糊注入による瘻孔閉鎖を試み,良好な結果を得たので報告する.昭和63年5月から平成元年10月までの期間に321例の消化管手術を施行し,術後縫合不全,瘻孔の形成を認めた27例中12例を対象とした.年齢は28歳から80歳,性別は男性6例,女性6例で,胃全摘術後5例,膵頭十二指腸切除術後3例,直腸切断術後3例,ほか1例であった.それぞれ2週間から5カ月,平均8週間の保存的治療を行い,瘻孔の縮小は認めたものの治癒には至らず,フィブリン糊注入を施行した結果, 9例で瘻孔閉鎖,治癒した.本法によれば浸出液が持続的かつ多量にあるもの,感染の急性期にあるもの,瘻孔部に腫瘍が浸潤しているものなどを除いた多くの症例で,手術的治療をすることなく,短期間で瘻孔を治癒させることが可能であり,きわめて有効な治療法である.