- 著者
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澤田 光平
日原 裕恵
吉永 貴志
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.126, no.5, pp.321-327, 2005 (Released:2006-01-01)
- 参考文献数
- 7
オンチャネルは生理的に重要な機能を有しており,創薬の標的としても非常に魅力がある.しかしイオンチャネル創薬研究は他の分野に比べ未開拓であり,その中でも電位依存性イオンチャネルは研究の難しさから特に遅れている.電位依存性イオンチャネルの創薬研究でも1次スクリーニングには蛍光測定法のような多検体評価の可能な系,2次スクリーニングはより信頼性が高く,生理的条件で情報の得られるパッチクランプ法を用いることが推奨される.しかし,従来のパッチクランプ法では熟練した研究員でも1日に多くて10化合物程度しか評価できず,スループット性は低い.このために電位依存性イオンチャネルの創薬研究の発展は著しく阻害されていた.しかし,最近オートメーションパッチクランプ法が開発され,電位依存性イオンチャネルの創薬研究も新たに活況を呈するようになってきた.hERGチャネルは薬剤によるQT延長,不整脈誘発の危険性に最も深くかかわっており,探索研究初期からそのリスク排除のための検討が必要である.我々は化合物によるhERGチャネル抑制作用検討のため,hERGチャネル安定発現細胞の樹立,高速スクリーニング法として蛍光膜電位測定法,また2次スクリーニング法としてIonWorks HTシステムを用いたオートメーションパッチクランプ法の構築を試みた.蛍光膜電位測定法は非常に高いスループット性を有するが,false negative/positiveの割合も高い.一方IonWorks HTを用いたオートメーションパッチクランプは従来のパッチクランプと比較しても同等の精度で電流の記録が可能であり,化合物のIC50値もよい相関を示した.しかし一部の化合物ではIC50値の乖離も見られ,今後更にシステムの改良も必要である.以上のように電位依存性イオンチャネル創薬技術にはまだ課題もあるが,大きな可能性が開けてきた.