著者
日向 道
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Koukyo Seisaku Shirin : Public Policy and Social Governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.306-320, 2021-03-24

国民・国家の防衛は国の専管事項として,自衛隊法に基づき,防衛省・自衛隊がほぼ独占的に担ってきたが,国民保護法が2004年に制定され,その一部が変更された。全ての自治体は,地方分権改革と時期を同じくして,新たに防衛に関する責務が与えられた。それは法定受託事務である「国民の保護」であり「戦後ほとんど無縁の業務」であった。こうして全市町村も,国が示した国民の保護の基本方針と都道府県作成の国民保護計画を受けて国民保護計画を作成して国民保護業務を始めた。そのうち自衛隊が所在する市町村では,「まちづくり」のため「自衛隊との共存・共栄」を掲げて,基地・駐屯地の維持・拡充を求める運動を行っているが,それが最も盛んであるのは北海道の基礎自治体である。本論文では,当初の国民保護の計画作成・執行と訓練にあたっての議論,問題及び防衛行政に対する姿勢及び自衛隊との協働関係について,北海道の自衛隊が所在する基礎自治体の事例を用いて考察した。その結果,自治体は戸惑いながらも,長年維持してきた駐屯地との良好な協働関係を活用して自らの力で国民の保護業務を遂行している。しかし,国民保護法制は,施行後約20年経っても,全国的には未だ改善を要する多くの問題と課題がある。