- 著者
-
日本肝癌研究会追跡調査委員会
- 出版者
- 一般社団法人 日本肝臓学会
- 雑誌
- 肝臓 (ISSN:04514203)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.8, pp.460-484, 2010 (Released:2010-09-02)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
-
42
32
第18回全国原発性肝癌追跡調査においては,544施設から2004年1月1日から2005年12月31日までの2年間の20,753例の新規症例と30,677例の追跡症例が集計された.追跡症例の有効回答率は74.2%であった.基礎統計は,第18回新規登録症例を対象として死因,既往歴,臨床診断,画像診断,治療法別の各因子,病理診断,再発,剖検についてまとめた.第17回調査と比較し,肝細胞癌における臨床診断時の高齢化,女性の増加,HBs抗原,HCV抗体陽性率の減少,腫瘍径の縮小の傾向が,治療においては局所療法におけるラジオ波焼灼療法の増加が認められた.1994年から2005年まで新規登録症例の中で最終予後が生存または死亡となった症例(不明を除く)について肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌の治療法別,背景因子別累積生存率を算出した.肝細胞癌については腫瘍個数,腫瘍径,肝障害度を組み合わせることにより背景因子を揃えて,治療法別(肝切除,局所療法,肝動脈塞栓療法)の累積生存率を算出し,また,1978年から2005年までの新規登録症例を3期に分け,累積生存率を算出した.新規登録症例数は経時的に増加し,肝細胞癌の予後の改善が著しいことが明らかとなった.本追跡調査が原発性肝癌の研究および診療の進歩に役立つことを期待する.