著者
日本血管外科学会データベース管理運営委員会 NCD血管外科データ分析チーム
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.437-456, 2018

<p>2012年に日本で行われた血管外科手術について,日本血管外科学会データベース管理運営委員会が集計結果を解析し,アニュアルレポートとして報告する.【方法】NCDの血管外科手術データに基づき,全国における血管外科手術動向およびその短期成績(術死,在院死亡)を解析した.【結果】2012年にNCDに登録された血管外科手術は95,979例であり,1,043施設からの登録があった.このデータベースは,7つの血管外科分野即ち動脈瘤,慢性動脈閉塞,急性動脈閉塞,血管外傷,血行再建後合併症,静脈疾患,その他の血管疾患からなっており,それぞれの登録症例数は,19,600, 13,141, 4,600, 1,623, 1,973, 30,725, および24,332例であった.腹部大動脈瘤(含む腸骨動脈瘤)は15,745例で,その47.6%がステントグラフトによって治療されていた.1,704例(10.8%)の破裂例を含んでおり,手術死亡率は破裂,非破裂で,それぞれ17.8%,0.8%であった.慢性動脈閉塞症は,重複を含み13,141例登録され,open repair 7,859例(うちdistal bypass 1,173例),血管内治療5,282例が施行された.静脈手術の内訳は,下肢静脈瘤30,088例,下肢深部静脈血栓症395例などであった.その他の手術として,バスキュラーアクセス手術22,654例,下肢切断1,390例などが登録された.全分野において手術死亡率に大きな変動はないが,下肢大切断が減少しておらず,また,その死亡率も高止まりしていることに問題を残している.【結語】2011年と比較して,全領域において血管内治療が増加しており,とくに動脈瘤に対するステントグラフト内挿術や静脈瘤に対するレーザー焼灼術の増加が目立った.</p>