著者
日本農薬株式会社登録薬事部
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.S261-S267, 1992
被引用文献数
1

フェンピロキシメート原体および5%フロアブル製剤の安全性評価を行なうために各種毒性試験を実施した.<br>その結果, 原体の急性経口毒性は劇物相当であるが, 製剤の毒性は弱く, 普通物に相当する. 原体および製剤の急性吸入毒性は相対的に強く, 製造時等での取扱いに十分に注意する必要がある. 原体および製剤の急性経皮毒性は弱い. 原体は眼に対して軽度の刺激性を示すが, その後回復がみられている. 皮膚刺激性は認められない. 製剤では, 防除場面で使用する1000倍希釈液での刺激性は認められていないものの, 原液では眼および皮膚のいずれにも軽度の刺激性を示す. 原体はモルモットでの Maximization 法で皮膚感作性を示したが, より実際的な評価法と考えられる Buehler 法では皮膚感作性は認められず, 製剤においては Maximization 法でも認められなかった. マウス, ラットおよびビーグル犬での亜急性毒性, 慢性毒性および発癌性試験において飼料摂取量の減少に伴う体重増加抑制, タンパクおよびグルコース濃度の低下および尿素濃度の上昇が認められた. ビーグル犬ではさらに下痢や嘔吐に加えて, 心拍数の減少がみられた. しかし, いずれの試験においてもフェンピロキシメート投与に起因する病理組織学的変化や腫瘍性病変の発現は認められず, 変異原性も陰性であった. 繁殖や次世代に対する悪影響および催奇形性は認められなかった.<br>フェンピロキシメートの鳥類に対する毒性は弱いが, 原体のコイおよびニジマスでの48時間TLm値がそれぞれ0.0061および0.00057ppm, ミジンコでの3時間TLm値が0.085ppmと, 魚類およびミジンコに対するフェンピロキシメートの毒性は強いため, 池や河川等の水系への流入には十分に注意する必要がある.<br>本剤は, 1991年にリンゴ, 柑橘, ブドウ, ナシ, モモ, オウトウ, チャ, スイカ, メロン, イチゴ, カーネーションおよびキクのハダニ類に対して登録を取得し, 1992年にはハダニ類以外のチャのチャノミドリヒメヨコバイに対しても登録を取得した. 登録保留基準値は, 果実 (ナツミカンの外果皮およびブドウを除く) 0.5ppm, ナツミカンの外果皮5ppm, ブドウ2ppm, チャ0.5ppmである.<br>フェンピロキシメートは定められた使用基準を遵守すれば農業資材の一つとして有用であると考える.