著者
根本 知己 川上 良介 日比 輝正 飯島 光一郎 大友 康平
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.31-35, 2014 (Released:2015-04-21)
参考文献数
15

2光子励起レーザー顕微鏡(2光子顕微鏡)は,低侵襲性や深い組織到達性といった特徴のため,神経科学を中心に,免疫,がんなどの他領域にもその使用が爆発的に広がっている.植物の研究領域においても,葉緑体の自家蛍光を回避することが可能であるため,2光子顕微鏡の利用は増加している.我々は2光子顕微鏡の開発とその応用に取り組んで来ているが,最近,生きたままでマウス生体深部を観察する“in vivo”2光子顕微鏡法の,新しいレーザー,光技術による高度化に取り組んでいる.特に共同研究者の開発した長波長高出力の超短パルスレーザーを励起光源として導入することで,生体深部観察能力を著しく向上させることに成功した.この新規“in vivo”2光子顕微鏡は,脳表から約1.4 mmという世界最深部の断層イメージング,すなわち,生きたマウスの脳中の大脳新皮質全層及び,海馬CA1領域のニューロンの微細な形態を観察することが可能になった.一方で,我々は超解像イメージングの開発にも取り組み,細胞機能の分子基盤を明らかにするために,形態的な意味での空間分解能の向上にも取り込んでいる.特に,我々は新しいレーザー光「ベクトルビーム」を用いることで,共焦点顕微鏡や2光子顕微鏡の空間分解能の向上にも成功した本稿では,我々の最新の生体マウス脳のデータを紹介しつつ,2光子顕微鏡の特性や植物組織への可能性について議論したい.