著者
鳥井 彰人 末永 裕之 寺嶋 康夫 日比野 治生 奥田 哲也 小寺 泰弘 長谷川 満 松尾 尚史 服部 正憲 余語 弘
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.1148-1153, 1987

交通事故によって発生した膵完全断裂にARDS (adult respiratory distress syndrome)を合併した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.<br> 症例は40歳の男性で,泥酔状態で乗用車運転中の正面衝突事故にて受傷した. CT等の諸検査によって膵損傷が疑われたが,全身状態が比較的落着いていたため保存的治療を開始した.受傷後3日目より低酸素血症及び呼吸困難が出現し,更に胸部単純レントゲン写真の所見等によりARDSと診断した.レスピレーターによる呼吸管理を行ったが効果無く,状況の改善をはかるべくその原因と思われる膵損傷に対して手術を施行したところ, ARDSは次第に改善し,軽快退院した. ARDSの治療には原因の除去が最も重要であるものと思われた.