著者
日色 知也 室谷 智子 藤間 藍 地震火山こどもサマースクール 運営委員会
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

地震火山こどもサマースクールは、日本地震学会、日本火山学会、日本地質学会に加えて開催地団体を主催として、災害だけでなく災害と不可分の関係にある自然の大きな恵みを伝えることを目的とし、1999年から毎年夏休みに全国各地で開催されている。2019年度は特定非営利活動法人地球デザインスクールが主体となり、8月10~11日の2日間にわたり京都府北部の京丹後市および宮津市で実施した。「丹後半島のヒミツを解きあかそう!」をテーマに、日本海拡大期から現在までの歴史やそこに成立した地域社会との関係について、野外観察や身近な材料を使った実験、研究者との対話を通して理解し、自然の恵みや観光、自然災害についての理解を深めるとともに、丹後半島の形成過程や丹後地域の過去、現在、そして未来を考えることを活動の目的とした。 丹後地域が含まれる山陰海岸ジオパークは、平成22年10月に世界ジオパークネットワークへの加盟が認定されたジオパークである。京都府、兵庫県、鳥取県にまたがる東西約120km、面積2458.44㎢の大きさをもち、丹後地域はその東端に位置する。地質学的な知見から、丹後地域は主に基盤岩である白亜-古第三系の宮津花崗岩類、それらと不整合関係および貫入関係にあたる新第三系中新統の北但層群、および中部更新統以降の地層より構成される。また、1927年に北丹後地震を引き起こしたとされる郷村断層帯と山田断層帯が分布する。 2019年度は、20人のこどもたちを4つのチームに分け、天橋立、新井崎神社、丹後海と星の見える丘公園、Hi-net 網野観測点、郷村断層、京丹後市郷土資料館などを回った。天橋立、新井崎神社、丹後海と星の見える丘公園など周辺の地形観察や実験観察から,どこに断層地形が見られるのか,それぞれの地形にはどのような特徴がありどのように形成されたのか,などをグループごとに考えた。特に実験では,日本海の拡大,北但層群中のハイアロクラスタイトのでき方,断層の形成,天橋立の形成と成長など、丹後半島の自然について身近なものを用いて考察した。さらに,国指定の天然記念物である郷村断層と京丹後市郷土資料館では,1927年の北丹後地震による被害や復興ついて学んだ。 プログラムの最後には、こどもたちはチームごとに学んだことをまとめ、「丹後半島はどうできた?」「この丹後半島で、どう遊び、どう暮らす?」について発表を行った。 こどもたちの発表では、大地震が生じたことでより強固で安全な街づくりが進行するきっかけとなる、自然景観を保ちながら天橋立の侵食を防ぎたい、地元の丹後のいい所を守りたいなどの意見が挙げられ、プログラムを通じて、深く考察していることがうかがえる。 サマースクール終了後には、こどもたちへアンケートを実施した。こどもたちのアンケート結果から、行った4つの実験のうち全てで「よかった」と回答した人が 80%を超えており、こどもたちは実験に対して高い関心があったことを示している。さらに、郷村断層の観察でも20人中19 人(95%)が「よかった」と回答しており、活断層や大地震などの諸現象への関心の高さがうかがえる。 本サマースクールは、こどもたちが自然と触れ合いながら、その地域の環境や災害などを学べるよい機会となっている。
著者
藤間 藍 日色 知也 地震火山子供サマースクール 運営委員会
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地震火山こどもサマースクールは、日本地震学会, 日本火山学会, 日本地質学会を主催として、1999 年から毎年夏休みに全国各地で開催されている. このイベントの目的は, 研究の最前線にいる専門 家が、 こどもたちに地震・火山現象の発生要因と自然の大きな恵みについてわかりやすく伝えるこ とである(日色ほか, 2018)。平成 30 年度は伊豆大島を舞台に地元の小学生から高校生まで 34 名を迎え実施した。 当初8 月 7 日, 8 日の 2 日間の開催を予定していたが、天候不順のため, 8 月 7 日の 1 日間に短縮しての開催とした。伊豆大島は, 一般に伊豆・小笠原弧上に位置し、太平洋プレートの沈み込みに伴うマグマの発生に より、現在まで火山活動が生じている火山島であると考えられている。最近の火山活動としては、1986 年の三原山噴火が挙げられる。今回は「火山島 伊豆大島のヒミツ」をテーマに、島の誕生から現在までの歴史やそこに成立した 地域社会との関係について、野外観察や身近な材料を使った実験, 研究者との対話を通して、こどもたちが火山噴火の仕組みを理解し、自然の恵みや観光, 自然災害についての理解を深めるとともに、島の過去, 現在, そして未来を考えることを活動の目的とした。こどもたちは1日の中で地形, 地層, および溶岩に関する野外観察, 室内実験と講義を通じて学習し、島の成り立ちについて理解を深めた。地形観察では、伊豆大島西側の溶岩台地や元町地区の街並み、カルデラ内部の構造を観察し、自分た ちが住んでいる島の土地について学んだ。地層観察では、 大島温泉ホテル付近の露頭にて火山灰を観察した。 火山灰中には神津島由来の灰白 色の火山灰が挟まれており、短い期間に別の島でも噴火していたことを学んだ。溶岩の観察では、パホイホイ溶岩とアア溶岩の産状の違いについて学んだ。室内では、カルデラ形成のメカニズムを再現したカルデラ実験, マグマの性質と上昇過程を再現し たマグマだまり実験, パホイホイ溶岩の移動と形成を再現した溶岩実験, 炭酸を用いて噴火様式に ついて再現した噴火実験を行った。1日の最後には、こどもたちはチームごとに学んだことをまとめ, 発表を行った。今回のサマースクール終了後、実行委員会はこどもたちからのアンケートや発表内容、および携 わったスタッフの意見をもとに、来年度のサマースクールの方針を議論した。実行委員会のスタッフの意見では、地元スタッフの長年の経験や機転の利いた行動で、運営をス ムーズに進められたことが挙げられた。また、こどもたちのアンケート結果からは、 4つの実験のうち3つで「よかった」と回答した人が 80%を超えており、こどもたちは実験に対して高い関心があったことを示している。さらに、地形および地層の観察でも 22 人(65%)が「よかった」と回答しており、地形地質学的な 諸現象への関心の高さがうかがえる。こどもたちの発表では、活火山は常に活動しており、生活する上で不便なこともあるが、温泉や良い 漁場など多くの恩恵の受けているという意見が挙げられた。毎年2日間かけて行われるプログラムを1日に短縮しての開催となったが、こどもたちは観察や 実験、講義を通して火山現象の発生要因を解き明かし, 火山島で住むことで得られる自然の恵み, 自然災害との共生のしかた, 伊豆大島の過去, 現在, そして未来について考え、有意義なサマース クールとなったと考えられる。