著者
王 宝禮 早坂 奈美 山口 康代 王 龍三
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.117-126, 2018 (Released:2018-11-08)
参考文献数
35
被引用文献数
2 1

排膿散及湯の歯周炎に対する有効性の確認を目的として,ラット口腔内の右側下顎第一臼歯部の歯肉にカラゲニンの処置により歯周炎を惹起させ,排膿散及湯2900mg/kg を10日間経口投与し,歯周炎に対する排膿散及湯の抗炎症作用の効果を検討した。歯周炎に及ぼす効果について,写真撮影による歯肉の状態の経過観察,最終投与後に摘出した炎症部位の病理標本による病理組織学的分析により評価した。その結果,排膿散及湯は,歯肉の腫脹を抑制すると共に,病理組織学的分析において歯周ポケットが浅くなり,上皮層糜爛改善,上皮突起の伸張,炎症細胞の減少,歯根膜の成熟を確認できた。さらに,好中球数の減少,血管数の増加傾向,破骨細胞数の減少傾向を確認した。また,ポケット接合上皮に生じた上皮脚の伸長とポケット上皮の根尖側への側方増殖が軽減した。以上の結果より,排膿散及湯が歯周炎に対して抗炎症作用を有する可能性が示唆された。