著者
小早川 久美子
出版者
広島文教女子大学心理教育相談センター
雑誌
広島文教女子大学心理臨床研究 (ISSN:21853185)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-11, 2011-04-15

心理療法統合に関する研究は、海外では1980年以降盛んになった。日本の心理臨床実践では折衷派が半数以上であるが(日本臨床心理士会、2003)、その研究においてはかなり遅れている。そこで本論では、心理療法統合に関する海外、日本における研究動向を探り、今後の心理療法統合研究の方向性について、Norcross(2005)による心理療法統合分類のひとつである同化的統合の観点から展望した。同化的統合で、力動的心理療法を基盤とするStricker & Gold(2005)や彼らに影響を与えたWachtel(1997)、家族療法を基盤とした同化的統合から関係系志向アプローチを創案した中釜(2010)などを検討した。日本の現状では、心理療法統合の有用性や有効性を明らかにするために事例研究の蓄積が必要であり、その着眼点としては、心理療法統合の契機や理由、クライエントとセラピストの関係性、心理療法統合がなされる時期や場面の特定、セラピストが心理療法統合に至る経緯を明確にし、記述することが必要ではないかと示唆した。
著者
早川 久美子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.35-44, 2007

「曾根崎心中」の研究史は、近松がいかに世話狂言などの先行作を下敷きにしていたかという、成立基盤の解明に重きが置かれていた。本稿では、本作品成立の意義を追求するため、先行世話狂言である「心中茶屋咄」、「河原心中」の二作品を取り上げ、そこでの心中原因の描かれ方を比較検討した。近松は、九平次を創作したことによって、生玉社の場からお初の行動に焦点を当てていることがわかった。お初は、困難に耐えながら徳兵衛への思いを貫いてゆく。