著者
明 素延
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.73-87, 2016

1990 年代後半からの情報通信技術の急速な発展に伴い半導体などの情報通信機器の価格低下が著しく,経済全体における情報通信機器の活用による生産性向上の効果が注目されている.本稿では,日本と韓国のICT製造部門において固定基準年方式による既存の接続産業連関表のデフレーター及び実質値のバイアス可能性を検討したうえで,ICT製造部門の生産性向上が他産業部門の生産性に与える効果の計測を行った.分析の結果,情報通信機器の価格低下が既存の接続産業連関表のデフレーターに充分に反映されていないことが明らかになった.そして,このような情報通信機器の価格低下の過少評価は韓国の方が大きく,ICT製造部門の生産性向上による他産業部門へのコスト削減効果あるいは生産性向上に与える効果が過小または過大評価になっていることがわかった.