著者
星(佐々木) 摩美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.89-104, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
27

韓国中等教育日本語教師の実践とビリーフについて,変化とその要因を中心に12名の教師の質的データを分析し考察した。その結果,変化には二つの要因があることがわかった。 一つ目は教育政策が示す教科のあり方,内容,教え方などの新しい知識を,実践の中でやってみることがきっかけとなっていた。その実践化のためには,①実践の文脈に動機があること,②実践できる手段や方法の具体的イメージが作れること,③教師の持っているビリーフと親和性があり,実践化することで何らかの価値が期待できることが必要であることが考えられた。 二つ目に,授業実践は,主に学習者と,学習者によって媒介された社会との相互作用によって常に再構成されている。教師の実践の語りに現れるビリーフは,教師自身の経験や媒介された社会など異なる源泉をもっており,それが重層的に積み重ねられることが要因であった。その変化はビリーフに多声性をもたらしていると考えられる。