著者
春日 志高 天野 洋
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-42, 2000-05-25
参考文献数
15
被引用文献数
7 12

1999年3月8日から5月31日の期間に全国47都道府県を対象としてケナガコナダニ属のダニのホウレンソウ加害に関するアンケート調査を実施した.被害は北海道から九州までの広範囲で認められ, 施設栽培で早春と晩秋に発生するのが一般的だった.ケナガコナダニ属のダニはまれに大きな被害を引き起こすが, 季節的に限定された発生を示すため害虫としての重要性は比較的低く評価された.また, 最近5年間くらいで被害が認識されるようになった比較的新しい害虫であることが示された.被害傾向は「年によってまちまち」が50%, 「横ばい」が27.1%, 「年々増加」が18.8%, そして「年々減少」が4.2%だった.イナワラやモミガラの堆肥, 特に未熟堆肥の大量投入が発生を助長する傾向が認められた.さらに登録のある2薬剤の評価を求めたところ, DDVP乳剤の効果にばらつきが認められた.この原因は薬剤がダニの寄生する新芽部にかかりにくいためと考えられた.一方, DCIP粒剤の評価は比較的高かったが匂いが強いためか使用例は少なかった.郵送されたサンプルからダニを採取し同定したところ, ホウレンソウケナガコナダニが優占種であり, ホウレンソウ加害の主要種と考えられた.