著者
春木 裕美
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.16-30, 2020-08-31 (Released:2020-10-03)
参考文献数
38

本研究は,障害児を育てる母親の就業に影響を及ぼす要因を明らかにし,障害児家族への援助の在り方を検討することを目的とした.特別支援学校在籍児の母親を対象とした質問紙調査を行い,266通の回答を有効とした.従属変数は,就業の有無,仕事の制限感とし,階層的重回帰分析,階層的2項ロジスティック回帰分析を行った.分析の結果,母親の就業に最も影響を与えていたのは子どもの医療的ケアだった.医療的ケアが必要な場合,母親は無職であることや仕事の制限感が高かった.有職の母親は,福祉サービス利用度が高いことや福祉サービスの量的充足度が高いほど仕事の制限感を低めていた.一方,対象児の介助度が高いほど,また,母親の役割拘束の認識が高いほど仕事の制限感を高めていた.これより,障害児相談支援の役割として,母親が就業を希望する場合には,子どもと家族の双方を考慮した福祉サービスのコーディネートの重要性について言及した.