著者
藤田 浩之 曽我 隆義 鈴木 淳一 石ケ坪 良明 毛利 博 大久保 隆男 長嶋 洋治 三杉 和章
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.398-403, 1995-04-20
参考文献数
18

横浜市立大学医学部第1内科に入院したHIV陽性患者について, 臨床的病理学的検討を加えたので報告する. 対象は, 1988年2月より1994年5月までの約6年間に, 当科に入院したHIV陽性患者13例で, 外国人の1例を含め, 全例が男性であり, 初回入院時の年齢は, 18~70歳であった. 感染経路は, 血液製剤輸注8例, 性交渉5例で, 現在までに11例がAIDSを発症しており, 内6例が死亡している. 発症原因は, カリニ肺炎, HIV脳症などで, 発症時のCD4陽性リンパ球数は3.4~220/μl (平均73/μ1) であった. 延べ25回の入院理由は, 日和見感染が19回で, その内6回をカリニ肺炎が占めるが, 最近では予防を行っているため減少している.剖検は4例で施行された. 死亡時のCD4陽性リンパ球数は平均6.1/μlであり, 高度に細胞性免疫が低下した状態であった. 脳では, 脳の萎縮や, HIV脳症の特徴的所見であるグリア結節の形成がみられ, 皮膚では, パピローマウイルスによる尖圭コンジローマや, ポックスウイルスによる伝染性軟属腫がみられた. また全例でサイトメガロウイルス感染を示す封入体が認められた. AIDS発症からの生存期間は5カ月から42カ月で, 50%生存期間は26カ月であった. 現在AIDSは予後不良の疾患群であるが, その生存日数は延長の方向にあり, すべての医療従事者はAIDSに対して, より積極的な対応を求められている.