著者
岩田 健太郎 島田 智恵 川端 寛樹
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.44-48, 2013-01-20 (Released:2014-12-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

A 42-year-old woman presenting with years of fever and vague symptoms could not be satisfactorily diagnosed in physical examination or conventional workups. She was presumptively diagnosed with chronic fatigue syndrome and treated symptomatically. Fourteen months after the initial visit, she developed left facial palsy. Lyme disease serology was positive. Four weeks of oral amoxicillin ameliorated symptoms. Only 5 to 15 cases of Lyme disease are reported annually in Japan, mostly from the northeastern-most island of Hokkaido. It may occur anywhere in Japan, however; probably is underdiagnosed. Lyme disease may cause fevers of unknown origin. Astute clinical suspicion and appropriate workups are thus needed to diagnose this infection.
著者
福島 一彰 柳澤 如樹 佐々木 秀悟 関谷 綾子 関谷 紀貴 菅沼 明彦 味澤 篤 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.310-315, 2016-05-20 (Released:2017-11-17)
参考文献数
12

We present 3 cases of ocular syphilis in patients who had been newly diagnosed as having HIV. All the patients had only complained of ophthalmologic symptoms at the time of their initial visit. Treatment with penicillin was successful, resulting in no significant sequelae. Ocular syphilis may lead to reduced visual acuity or even blindness if left untreated. However, the diagnosis may be challenging, since patients may lack symptoms that are commonly observed in cases with primary and secondary syphilis. Considering the recent increase in the number of syphilis patients, clinicians should be aware of ocular syphilis and should have a high index of suspicion for syphilis in any patient at risk so as to ensure a prompt diagnosis.
著者
海老沢 功 本間 れい子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.701-707, 1985-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本に於ける破傷風患者は減少し過去の疾患と考えられやすい. 日本の破傷風の実態を把握するために人口動態統計に基づく破傷風死亡率及び自験例を中心に破傷風致死率について検討した. 1947~1982年までの破傷風死亡総数は21,916人であり1947年の破傷風死亡率は人口10万対2.84であったが1955年に10万対0.98, 1982年に10万対0.02と著しく減少した. 新生児破傷風死亡率は1947年に生産児10万対36.1であったが1966年ごろより減少の速度をはやめ1979年には死者0となった. 破傷風死亡者の年齢別分布の推移をみると1955年ごろまでは新生児破傷風が40%以上をしめ次いで0~9歳の患者が20%近くをしめており若年患者が多く高齢者の割合が少なかった. 1966年ごろより著しく減少した新生児破傷風にかわって60歳以上の患者の増加がめだち破傷風患者の高齢化現象が認められた. この原因として施設内出生率の増加に伴う新生児破傷風の減少, DTP三種混合ワクチン普及による若年層患者の減少及び平均寿命の延びに伴う高齢患者の相対的増加等が考えられる. 自験例593人について破傷風の致死率の変遷を検討したところ1970年までは40%以上の患者が死亡したが1971年以後の致死率の低下はめざましく20%以下となった. 特にOnsettime48時間以内の重症例における1976年以後の致死率の低下が著しく, 集中治療の普及と進歩によるものと考えられた.
著者
岩田 雅史 戸田 眞佐子 中山 幹男 辻山 博之 遠藤 済 高橋 雄彦 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.487-494, 1997
被引用文献数
8

紅茶エキスによるうがいが, インフルエンザを予防できるかどうかを検討した.実験は, 平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5カ月間行なった.まず同一職域集団297人を2群に分け, 実験群151人は, 原則として8時と17時の2回, 1回約100ml程度の紅茶エキス (0.5W/V%) でうがいをした.対照群146人は, 特に何も行なわなかった.実験期間中にインフルエンザ症状を呈した者56人の咽頭ぬぐい液からウイルスを分離し抗原分析をした結果, A型ウイルスH3N2が2株およびB型ウイルス10株が分離された.感染の判定は, 実験開始時および終了時に採血を行い, A/Yamagata/120/86 (HIN1), A/Saitama/55/93 (H3N2), B/Saitama/5/93と赤血球凝集抑制反応を行ない, 抗体価が4倍以上上昇したものを感染とみなした.<BR>その結果, 感染者は実験群35.1%に対して対照群では48.8%で, 有意な差 (p<0.05) が認められた.この結果, 紅茶エキスによるうがいは, インフルエンザを阻止しうる可能性が示唆された.
著者
岩田 雅史 戸田 眞佐子 中山 幹男 辻山 博之 遠藤 済 高橋 雄彦 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.487-494, 1997-06-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
9 8

紅茶エキスによるうがいが, インフルエンザを予防できるかどうかを検討した.実験は, 平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5カ月間行なった.まず同一職域集団297人を2群に分け, 実験群151人は, 原則として8時と17時の2回, 1回約100ml程度の紅茶エキス (0.5W/V%) でうがいをした.対照群146人は, 特に何も行なわなかった.実験期間中にインフルエンザ症状を呈した者56人の咽頭ぬぐい液からウイルスを分離し抗原分析をした結果, A型ウイルスH3N2が2株およびB型ウイルス10株が分離された.感染の判定は, 実験開始時および終了時に採血を行い, A/Yamagata/120/86 (HIN1), A/Saitama/55/93 (H3N2), B/Saitama/5/93と赤血球凝集抑制反応を行ない, 抗体価が4倍以上上昇したものを感染とみなした.その結果, 感染者は実験群35.1%に対して対照群では48.8%で, 有意な差 (p<0.05) が認められた.この結果, 紅茶エキスによるうがいは, インフルエンザを阻止しうる可能性が示唆された.
著者
加藤 孝治 中村 千衣 天野 冨貴子 田中 康之 上田 康夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.872-876, 1982-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

世界の交通網の発達により, 各地の種々の風土病を観察する機会が多くなったが, 診断困難な場合もある.症例は, 22歳白人男子学生で, 約2年にわたり, 欧州, 中近東, バングラディシュ, ネパール, インドを経て来日した. 彼は, インドでA型肝炎とサルモネラ腸炎に罹患し来日し入院した. この治療中に三日熱マラリァを発症した.インド出国時に多数の蚊に刺され, その17日後より5日間発熱し解熱した. 35日目に再度発熱し, 48時間間隔の定型的な熱型と, 三日熱マラリア原虫を血液像で認め, マラリアと診断した.抗マラリア治療終了後, 1週間目に行なった骨髄穿刺では, 環状体の原虫を少数認めたが, 死滅し, 完治するものと考えられる.今後国外旅行者はさらに増加し, A型肝炎, マラリアを含め, 各地の風土病の発生が増加すると思われる.国外旅行者の発症に関しては, 充分注意して診断する必要がある. 又治療薬剤については, 種々の制限があるが, 予防投薬や, ワクチンの開発が特に望まれる.
著者
中山 幹男 戸田 眞佐子 大久保 幸枝 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.824-829, 1994-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

マウスのインフルエンザウイルス感染実験系を用いて, 紅茶エキスによるインフルエンザウイルスの感染性の阻止を検討した.ウイルス懸濁液のみを鼻腔内に吸入させたマウス群は, 体重減少をおこし10日以内に100%が死亡したが, ウイルス懸濁液に2%(w/w) 紅茶エキスを混合し5分後に吸入させたマウス群では, 正常マウス群と同等の体重増加を示し, すべてのマウスが生残した.生残マウスのインフルエンザウイルスに対する血中抗体価を調べたところ, 10匹中9匹は抗体陰性であった.この実験結果から, 日常飲用している紅茶エキス濃度 (約2~3%) で, 105.3PFU/マウス (101, 3LD50) の高濃度のインフルエンザウイルスの感染性がほぼ100%阻止されることが明らかになった.以上の成績は, MDCK細胞を用いたin vitroの成績を支持するとともに, 紅茶エキスで処理されたウイルスの感染性が生体内で復帰しないことを示唆している.
著者
田中 真奈実 入江 勇治 安羅岡 一男 佐藤 章仁 松本 繁 白田 保夫 中村 尚志 河合 美枝子 海老原 誠
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.156-163, 1988

関東地方利根川流域で感染した慢性日本住血吸虫症について, 茨城県内診断例12例を中心に, その診断法・病態・治療適応について検討した. 患者は, すべて海外渡航歴・利根川以外の本症流行地への旅行歴はなく, 取手市戸頭, 稲敷郡河内村, 筑波郡谷和原村等かつて本症の流行が報じられた地域の在住者である. 血中抗住血吸虫抗体及び糞便中の虫卵は検査したすべての症例で陰性であった. 8例の患者の確定診断は, 本症とは異なる基礎疾患で摘出された臓器 (胃・十二指腸等上部消化管及び肝・胆道系) 中の日本住血吸虫虫卵の病理学的検索によってなされた. しかし, 茨城県取手市戸頭の3症例と筑波郡伊奈町の1症例は, 人間ドックで画像診断学的に診断されており, 流行地における本症患者のスクリーニングには, 肝エコーにおける魚鱗状パターン, 肝CT像における被膜石灰化像・隔壁様石灰化像等特徴的所見も有用であることが示された. また, その病態は, 基礎疾患によって異なっており, 胃癌・肝癌等悪性腫瘍との合併例は4例であった. プラジカンテルによる治療適応の判定には, 虫卵排出の有無及び虫卵の孵化能の検索が必要であるが, 疑わしい症例には生検材料による孵化試験をすることが必要である. 病理組織学的検索だけでは, 感染時期及び孵化能の判定は困難である.
著者
武内 可尚 富樫 武弘 砂川 慶介 加藤 達夫 神谷 齊 中山 哲夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.56-62, 2002-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
14

麻疹・風疹二混 (HF) 生ワクチンを12-90カ月の小児442名に接種し抗体反応と副反応調査をおこなった. 368例で接種前後のペア血清を採取し, 接種前麻疹赤血球凝集抑制 (hemagglutination inhibition; HI) 抗体陰性者363例のうち抗体陽転例は343例 (94.5%) であった. 接種前風疹HI抗体陰性者361例のうち抗体陽転例は349例 (96.7%) であった.副反応調査は406例が対象となった. 37.5℃ 以上の発熱は102例 (25.1%), 39.5℃ 以上の発熱は2例 (0.5%) に認められた.発熱出現日の平均は6.7日で, 平均有熱期間は2.2日間であった発疹は87例 (21.4%) に認められ, 発疹の平均出現日は接種後7.1日で平均4.8日間発疹が持続し, リンパ節腫脹は12例 (3.0%) に認められた. 麻疹・風疹二混生ワクチンは各単味ワクチン接種と同等の効果と安全性が確認され, 二混生ワクチンは臨床的に有用である.
著者
山本 徳栄 浦辺 研一 高岡 正敏 中澤 清明 後藤 敦 羽賀 道信 渕上 博司 木俣 勲 井関 基弘
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.518-526, 2000-06-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
17
被引用文献数
14 24

水道水によるクリプトスポリジウム症の大規模な集団感染が1994年6月に埼玉県越生町で発生した. この事件の疫学的調査の結果と対応を総括した. 全住民 (13, 809名) に対する健康調査を実施した結果, 回答者12, 345名のうち8, 812名 (714%) が下痢や腹痛を発病し, 2, 856名が病院で外来診療を受け, 24名が入院した. 町外からの来訪者も感染し, 感染者の総数は9, 140名に達した. 流行時に1日だけ町内に滞在し, 感染した14名の潜伏期間は平均4.4日 (5日~8日) であり, 7名はコツプに半分~2杯の水道水を飲用して感染した。小・中学生の発症例1, 013名の有病期間は平均52日 (1~15日) であり, 発熱した469名の体温は平均37.8℃ (34.7~40.3℃) であった. また, 成人187名の有病期間は平均48日 (1~18日) であったCryptosporidium parvumのオーシストは患者便から検出され, 水道水, 浄水場の原水 (河川水), 浄水場のすぐ上流に位置する下水処理施設の放流水からも検出された. 流行の発生前, 渇水により河川水の水量が著しく減少していたが, 夜間の豪両で原水の濁度が急上昇した. しかし, 不適切な浄水処理により水道水が汚染されたことが, 集団感染の発端となった. また, 患者便に含まれる大量のオーシストが下水処理場から河川水 (水道原水) に流入し, 水道水を介してさらに感染者が増加するという循環が流行の規模を拡大させた.
著者
具 芳明 岡本 悦司 大山 卓昭 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.494-500, 2011-09-20 (Released:2017-08-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

薬剤耐性菌に対する対策として抗菌薬適正使用が強調されている.しかし,抗菌薬使用量とくに外来での抗菌薬使用量を地域単位で把握する試みはこれまでになされていない.そこで,長野県諏訪地域における 2009 年 12 月から 2010 年 5 月の国民健康保険電子レセプトから抗菌薬処方情報を集計するとともに,同地域の主要病院における薬剤耐性菌の頻度を集計し,外来での抗菌薬使用量との関連について検討した. 同地域における国民健康保険被保険者数は 31,505 人(人口の 27.1%)であり,レセプト電子化率は医科 77.4%,調剤 96.0%であった.外来での抗菌薬総使用量は 9.34 Defined Daily Dose(DDD)/1000 被保険者・日であり,MLS(マクロライドなど),ペニシリン以外の β ラクタム系,キノロン系の順であった.海外における先行研究と比べ,外来抗菌薬使用量は少なく,その内容も特徴的であった.大腸菌のキノロン耐性は外来でのキノロン系抗菌薬の使用量から予想される範囲であったが,マクロライド非感受性肺炎球菌の割合は外来での MLS 使用量から予想されるよりも高かった. 国民健康保険電子レセプトを用いて地域での抗菌薬使用量を算出することが可能であった.抗菌薬総使用量およびその内容は,抗菌薬適正使用を含めた薬剤耐性菌対策を推進する上で有用な基礎情報になるものと考えられた.
著者
丹生 徹 沖永 功太 丹生 茂 安部 茂 山口 英世
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.463-469, 1996-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

ヒト好中球のCandida albicans発育阻止能が, 中心静脈栄養 (IVH) に用いられる高カロリー輸液によりどのように影響を受けるか検討した.ヒト好中球が, C.albicansの発育を阻止するin vitro実験系において, グルコース濃度を1~2%に高めることによって, ヒト好中球の抗Candida活性は強く抑制された.これに対して, 市販高カロリー輸液の添加により, グルコース濃度を上昇させても, ヒト好中球の抗Candida活性の低下は, ほとんど認められなかった.この中に含まれるグルコース拮抗物質について検討を行った結果, アミノ酸分画に有効成分が存在することが明らかになった.このアミノ酸分画には, dexamethasoneの好中球機能抑制をも緩和する効果が認められた.さらに再機構アミノ酸混液でも同様の結果が得られた.したがって, 高カロリー輸液にアミノ酸液が混入されているのは, 通常の栄養補充の目的以外にも, 好中球機能の保持という面でも有用であり, 適切な濃度のアミノ酸液を投与することが重要と考えられた.
著者
島田 馨 岡 慎一 鈴木 宏男 稲松 孝思 浦山 京子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.459-463, 1985-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

東京都養育院付属病院の黄色ブ菌敗血症は1973~79年までは年間2~9例であったが, 1980~83年は年間11~20例と増加した. この血液から分離された黄色ブ菌に対するDMPPCとCEZのMICを測定すると, 1977年以前の分離株はすべてDMPPCとCEZに感性であったが, 1980年以降分離した63株中39株が両者に耐性をしめした. メチシリン・セフェム感性の黄色ブ菌敗血症は1973~83年の間, とくに増加していないが, これにメチシリン・セフェム耐性黄色ブ菌敗血症の加わって, 1980年以降の黄色ブ菌敗血症が増加したと解された. メチシリン・セフェム耐性黄色ブ菌敗血症例は, メチシリン・セフェム感性黄色ブ菌敗血症例に比して低蛋白血症が多く, また発症前2週以内にβ-lactam剤を使用された例が有意に多かった (p<0.01).
著者
野口 昌幸 木脇 圭一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.161-167, 2008-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

PI3K-AKTシグナル伝達系は細胞外からの様々な刺激により膜リン脂質を介して活性化される細胞内シグナル伝達系で, PTEN, LKB1, TSC1/2などのがん抑制遺伝子ならびにPI3K, AKT, FOXA, TCL1eIF4Eなどの原がん遺伝子の制御をし, これらの遺伝子群の変異や活性化はヒトの様々な悪性腫瘍の原因となることが知られている. 最近ウイルス感染をはじめとする感染症において細胞内にあるこのPI3K-AKT活性シグナル伝達系をウイルスあるいは感染病原体がたくみに利用し, 細胞死 (Apoptosis), 感染の遷延化 (latent infection), 腫瘍化 (malignant transformation) さらには結核菌における多剤耐性の成立などに関与していることが注目されている.我々はヒトT細胞リンパ芽球性白血病の原因遺伝子であるTCL1が細胞内のアポトーシス制御の要のセリンスレオニンキナーゼAKTの活性化補助因子であることを示した.このTCL1遺伝子は, HIVウイルス感染症, EBウイルス感染症などのウイルス感染症において其の活性が上昇し, AKTの活性化を介してこれらウイルス感染症の病態の発現や修飾に関与している.感染症におけるPI3K-AKTシグナル伝達系の働きを明らかにすることにより新たな薬剤耐性菌問題などの難治性感染症に対する新しい治療への道標を与える可能性がある.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 鄭 湧 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 原 寛 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.17-23, 2000-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

高齢者において, 1996/97年インフルエンザ流行期における不活化インフルエンザワクチンの予防効果及び接種回数とワクチン効果との関連について検討した. 対象は60歳以上のワクチン未接種者104名, 接種者166名の計270名で, ワクチン接種者中, 前年度接種を受けた患者104名中56名は今回1回, 58名は今回2回接種を受けた. 前年度接種を受けていない52名は, 今回2回接種を受けた.流行後のHI抗体価の4倍以上の上昇よりインフルエンザ感染と診断された患者の率は, 未接種者ではA/H3N2が16.3%, Bが8.7%であった. ワクチン接種者のインフルエンザ感染率は, A/H3N2が3.0%, Bが0.6%であり, 未接種者に比し有意に低かった (p<0.001, p<0.01). ワクチン接種者中, 前年度ワクチン未接種者にはインフルエンザ感染者は見られなかった.前年度ワクチン接種をうけ, 今回1回接種者および今回2回接種者のインフルエンザ感染率は, A/H3N2がそれぞれ5.2%および3.0%で, Bが0%および1.8%であり, 前年度ワクチン接種者においても, インフルエンザ感染率は, 未接種者に比し低く, 1回接種と2回接種に, 有意の差は認められなかった.以上の成績より, 不活化インフルエンザワクチンは, 高齢者のインフルエンザ予防に有効と考えられた. 高齢者において, インフルエンザワクチンの毎年の接種が勧められ, 1回接種も, 感染予防に有効であると考えられた.
著者
谷 賢治 高橋 宏 加藤 清 松永 敬一郎 坂本 洋 成田 雅弘 千場 純 進藤 邦彦 伊藤 章 福島 孝吉
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.280-285, 1983-03-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
17

風疹に続発する中枢神経系合併症のうち, 脳炎を併発した成人の一例を報告し, 本邦の報告例11例の文献的考察を加え, 小児の風疹脳炎と比較検討し報告した.[症例] 22歳男性.主訴は嘔吐と意識消失. 家族歴と既往歴に特記事項なし. 現病歴は体幹部の粟粒大の発疹, 発熱と頭痛が初発症状, 3日後に症状消失, 第7病日に主訴出現し入院. 意識レベルは100で神経学的な病的反射と髄膜刺激症状はなし, 末梢血で白血球増多と核の左方移動, 血清の風疹抗体価はHI512倍, CRP (±) とIgA増加. 検尿で蛋白 (+), 糖 (2+), 沈渣は赤血球やや多数/1視野, 白血球18~20/1視野. 腰椎穿刺で初圧75mm水柱, 細胞数189/3 (顆粒球59/3, リンパ球130/3), 蛋白94mg/dl, 脳波はθ波のslowing. 第8病日の意識レベルは3で項部硬直出現. 第9病日の血清風疹抗体価4,096倍, 第11病日の意識は明瞭, 第12病日に項部硬直消失. 第14病日の血清風疹抗体価8,192倍, 第27病日は2,048倍と低下.[自験例を含む本邦の成人風疹脳炎12症例と小児風疹脳炎の比較] 発疹出現から脳炎症状出現までの日数, 臨床症状, 髄液所見で成人の風疹脳炎と小児の風疹脳炎に差は見られないが, 初発症状で小児例に嘔気, 嘔吐と痙李が見られるのに成人例では認められない事や, 予後で小児例に死亡する例が有るが成人例では無い事が異なる.
著者
保阪 由美子 木村 琢磨 鈴木 亮 鄭 東孝 荘司 路 青木 泰子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.592-596, 2010-09-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
15

A 64-year-old man with prostate cancer and bone metastasis admitted for nausea, left abdominal pain showed no abnormal, and fever, abdominal ultrasound or chest X-ray findings. Despite antibiotics, left abdominal pain persisted for several days. Abdominal computed tomography (CT), showed splenic infarction. Transesophageal echocardiography suggested infectious endocarditis (IE) as a possible infarction cause, and roth spots were found on the retina. Gemella morbillorum was detected from blood culture. IE commonly causes Fever of Unknown Origin found by infarction. G. morbillorum, an anaerobic grampositive, viridans group streptococci, is indigenous to the oropharynx, upper respiratory, urogenital, and gastrointestinal tracts, and is thought to have weak toxity and pathogenicity in the body.