著者
最上 嘉子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.147-156, 1996-03-30
被引用文献数
2

この論文は, 学校現場における体罰を無くさなければならないという多くの声があるにも関わらず, なかなか無くならない現実に鑑みて書かれたもので, 体罰禁止の法律的な根拠, いくつかの代表的な裁判所の判断, および行政当局による指導例を紹介しながら体罰が無くならない背景について考察し, 体罰を根絶するための方策について論じたものである。特に, 体罰を是とする意見の解析にも論を進め, 学校現場の生の状況をも考慮し, 体罰は無くならないという結論を得ている。体罰が一向に絶えない大きな背景には, 家庭に代わって行うしつけ, 勝利を得るためのスポーツのハードトレーニング, 体罰の即時的効果への期待, 愛の鞭という解釈などがあり, また, 複数の児童生徒の間での人権問題, およびいじめ防止問題が絡んでいるために, 撲滅の困難さがある。しかし, 体罰の根絶は最大の目標であり, そのためには, 教師の職業上の心のゆとり, 人格向上のための援助などが必要とされる。