著者
月 徳 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.662-667, 1989
被引用文献数
1

1. ダッチアイリス品種'ブルー•マジック'を供試し, エチレンの処理時期を変えて, りん茎の発芽と開花に対する効果を調べた.<br>2. 6月中旬から30°Cで貯蔵した7及び9cm球を16週まで4週ごとにとりだし, エチレン処理後20°Cで置床し発芽試験を行うとともに, 低温処理 (9°C, 9週間)後20°Cで栽培して開花調査を行った. その結果, エチレンによる発芽促進効果は貯蔵4週後までのりん茎でわずかに認められるのみであったのに対し, 7cm球では4週間以上貯蔵したもので, 9cm球では貯蔵期間の長さに関係なくエチレン処理によりほとんどが開花した.<br>3. 5月中旬から経時的に株を掘り上げ, 2週間乾燥した後のりん茎に対し, エチレン処理の効果を調べた結果, りん茎が休眠中であった早期の掘り上げ球では, エチレンはわずかに発芽促進効果を示したが, 開花率を高める効果をほとんど示さず, りん茎の休眠が浅くなった遅い時期の掘り上げ球では, 開花率を高める顕著な効果を示した.<br>4. 地上部が黄変を開始した5月29日の早掘り球と適期の6月26日掘り球について, 掘り上げ後の室温貯蔵期間を変え, エチレンの効果をみた. 5月29日掘り球では室温貯蔵4週後のエチレン処理により花芽分化率は100%になったが, 6月26日掘り球では翌日のエチレン処理でも95%に達した.<br>5. 以上の結果, エチレンは休眠打破よりも, むしろ開花率を高めるのに顕著な効果を示すことが分った. すなわち, りん茎は高温を受けて休眠が打破され, さらにエチレン処理を受けて速やかに成熟期に移行し, 低温処理後花芽を形成するものと思われる.