著者
有本 昌代
出版者
関西学院大阪インターナショナルスクール
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的 日本の公立学校に在籍する外国人児童生徒の数が増加し、特に教科学習に必要となる日本語の習得に課題を抱えている。しかしながら十分な教材がないため、本研究では年少者が教科学習へ移行するためのカリキュラム「JSL内容重視クロスカリキュラム」と、それに基づく4つのテキスト『環境問題編』『文化編』『生活編』『社会編』の作成と編集を行った。○研究方法 2006年に開発した教材を配布しフォードバックを得て教材の改善に取り組んだが、印刷物として教材を配布したためコスト面、配布面において非効率だったためホームページからダウンロードできる体制をとることで改善を試みた。インターネットを活用することで、教材試用に関するアンケートの回収も効率的に行えると考えた。○研究成果 2009年4月より教材の内容を編集し、2009年11月に「年少者のための日本語教育」に関するホームページを開設し、海外における年少者の言語教育、「JSL内容重視カリキュラム」の概要、同カリキュラムに関する教材のダウンロードのページを設けた。同ホームページを年少者の日本語教育に携わるメーリングリストに配信し、教材試用の協力者を募った。結果43人からの問い合わせがあり、20人からのフィードバックを得た。年少者(特に中学生)の日本語指導の教材はいまだ数が少なく、教科学習へつなげるための教材がないという現状において、本ホームページは成人の日本語教育とは異なる年少者の日本語教育の必要性を提案し、ホームページ上でその教材例をダウンロードできるという点において意義がある。しかしながら、初級レベルの日本語指導は指導文法が定まっているのに対し、教科学習へつなげるための日本語指導の場合、外国人生徒の国籍や日本滞在年数、教科学習の既習知識にかなりの幅やばらつきがあり、なかなか日本語の学習語彙や表現、教科の指導内容を限定することは難しく、また取り出し授業や放課後の日本語指導という体制のため、日本語指導の時間が不規則かつ、不十分な状況にあり、短期間で誰でも使えるよう本教材の内容の縮小化を試みる必要がある。全体として協力者からはこのような形で教材をダウンロードできるホームページはなく、非常に意義のある研究であったと評価を得た。