著者
有瀬 和美 西崎 紗矢香 森田 珠恵 八木 祐助 武内 世生
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.422-427, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

自動尿量測定器によって耐性菌が伝播する危険性は以前から指摘されている.2011年11月,メタロβラクタマーゼ陽性のS.maltophiliaが10日間で4例検出された.当該病棟にある自動尿量測定器の細菌培養により,S.maltophiliaは検出されなかったが,メタロβラクタマーゼ陽性のMDRPが検出された.自動尿量測定器の使用は危険と考え,廃止に向けての介入を開始した.まず,病院内にあるすべての自動尿量測定器の細菌培養を行い,MDRP, S.maltophilia,およびESBL産生大腸菌が検出されたため使用中止すべき,と院内に広報した.その後,診療科別の自動尿量測定器使用患者数と蓄尿患者数を毎月集計し,公表する事とした.さらに,自動尿量測定器の使用目的や廃止の可能性について,各診療科医師や病棟看護師と個別に検討した.その結果,病院全体の自動尿量測定器使用患者数は,2011年11月の86人から,2012年6月には2人に減少した.そして,2012年7月末にすべての自動尿量測定器を撤去した.蓄尿患者数は,2011年11月の10人から,2012年6月には4人に減少した.その後,蓄尿は検査のために指定された日のみに行うだけとなった.危険の「見える化」,実態調査,調査結果の広報,スタッフとの個別検討などにより,自動尿量測定器の廃止を達成できたと考える.