著者
有賀 世治 水谷 武司
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究資料
巻号頁・発行日
vol.13, pp.19-49, 1971-03-30

1966年9月25日, 中型台風26号は高速で北上, 御前崎に上陸し, 北進したが, 深海に面する駿河湾沿岸一帯にまれにみる高波を生ぜしめた. これによって湾奥部の吉原, 富士海岸の海岸堤防を中心に全面的な越流が起こり, かなりの延長にわたり堤防および護岸が破壊し, 背後地の民家などに予期しがたい多くの被害を与えた. そしてわが国の外洋性海岸の防護のあり方について, また, 周期の長い波浪の見積りについて, 示唆するところが多かった. 国立防災科学技術センターでは, 災害直後, 関係研究機関と協議し, その要望にこたえて, 被災海岸一帯にわたり, 精密な航空写真(カラーおよびパンクロ)を撮影し図化し, また, 海浜の汀線および深浅測量を実施するほか, 海岸地形, 気象, 被災状況に関する資料を収集し, 一部解析を行ないつつ, 建設, 運輸, 農林各省の海岸堤防復旧もしくは改良事業の推進に役立たしめた. 本文は海岸災害の概況, 災害前後の地形変化, 特に越波の状況を記述し, 次いで湾奥の特異な潮位変化と波浪について, 関係機関の観測資料を基にして整理し, 海岸保全計画について若干の意見を述べたものである. さらに事後ではあるが, 建設, 運輸両省の研究機関の行なった資料分析の成果と, 模型実験の成果について比較することとした.