著者
杉浦 真理子 有賀 淳
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.83-94, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
27

近年, 遺伝子検査技術の革新的進歩により簡便で安価に遺伝子検査を受けられる時代への変遷が急速に進んでいる. 医療機関での遺伝子検査以外にも, 個人が医療機関を介さずに直接自分の遺伝子検査を実施できるDTCGT (Direct to Consumer Genetic Testing) が企業により提供されており, 自身の体質や能力, 将来起こしうる疾患を予測するサービスが普及している. 現在, 多くのDTCGTは専門の医師や遺伝カウンセラーなどの介入なく行われており, 医療面や倫理面で課題を抱えているが, いまだDTCGTを適切に規制する整備がなされていない. 筆者らは, 日米欧 (英, 独, 仏) における遺伝子検査に関する規制を比較し, DTCGTにかかる規制を検討した結果, 欧米のほとんどの国において, DTCGTは法的に規制されており, 実質禁止されていたが, 日本ではDTCGTにかかる規制はなく, 指針が示されているのみであった. さらに, 日本におけるDTCGTの現状と課題を検討するために, 個人での検査の窓口となるウェブサイト上でのDTCGT事業を調査し解析した結果, DTCGTを実施している112事業所の多くが医師の介入なしで検査および結果説明が行われており, 検査項目のなかには疾患診断に直結する検査結果や遺伝カウンセリングが必要となる結果が含まれていることがわかった. 今後, 日本でのDTCGTの急速な拡大によって生じる医療面, 倫理面での問題に速やかに対応するために, DTCGTの適切な規制および十分な実施体制の構築が急務と考えられる.