著者
有馬 奈穂 安藤 将孝 川井 康平
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.20-26, 2022 (Released:2022-09-27)

【はじめに】Extension thrust pattern と Recurvatum knee pattern を有する脳卒中片麻痺患者に対する,歩容改善を目的とした課題指向型アプローチの有効性について報告する. 【症例提示】アテローム血栓性脳梗塞(左尾状核~被殻)により入院した 50 歳代女性.発症から,66 日経過.歩行は見守りレベルであったが,Extension thrust pattern とRecurvatum knee pattern といった歩容の課題を認めた. 【方 法】Gait Solution Design(以下 GSD と称す)を使用した T-cane 歩行練習や筋力増強練習と併せて,動作学習理論に基づいた各歩行相における Step 練習を 2 ヶ月間実施した.効果判定として三次元動作解析装置および床反力計を用いて,関節角度,関節モーメントを算出し,介入前後で比較した. 【結 果】立脚中期における麻痺側膝関節伸展・麻痺側股関節伸展モーメントが増加し,体幹伸展,麻痺側足関節背屈・麻痺側膝関節屈曲角度の拡大を認め,Extension thrust pattern の改善を認めた.また,前遊脚期における麻痺側立脚後期の股関節屈曲モーメントが増加し,体幹・麻痺側股関節伸展角度,麻痺側足関節背屈・麻痺側膝関節屈曲角度の拡大を認め,Recurvatum knee pattern の改善を認めた. 【結 語】個々の問題点に対して,課題指向型アプローチを実践し,体幹・股関節などの Passenger Unit が安定したことで,歩容改善に繋がった.