著者
藤原 愛作
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.14-19, 2021 (Released:2021-05-14)
参考文献数
15

【目的】臨床実習における協同学習が,従来の学生1名に対して指導者1名の指導方法に比べて,学習の効率化につながるかを検討する.【対象と方法】当院に臨床実習を行った理学療法学科最終学年の学生4名を対象に行った.学生を2名1組にグルーピングを行い,学生の協同学習を促した.分析はアンケートの結果を単純集計し,解析を行った.【結果】本調査の回答は4名(回答率100%)から得られた.協同学習の利点については,学生同士で経験を共有しやすい,理解度の確認がしやすいなど肯定的な意見が選択された.困った点は,学生同士の話題が選択された.今後の指導法を希望は,協同学習が4名(100%)であった.【結語】協同学習は臨床実習の学習の効率化につながることや学生から受け入れが良い指導方法であることが示唆された.
著者
坪内 優太 髙橋 兼人 兒玉 吏弘 井上 仁 池田 真一
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-45, 2021 (Released:2021-05-14)
参考文献数
15

世界ではCOVID-19と呼ばれる新型コロナウイルス感染症2019のパンデミックが発生しており,日本も例外ではない.COVID-19患者の中には,重度の運動機能障害を呈する症例も報告されていることから,理学療法士には十分な感染予防対策と適切なリハビリテーションの提供の両立が求められる. 我々は2020年4月,COVID-19患者の受け入れを想定し,事前にリハビリテーション実施基準および介入方法に関する規定を作成した.その後,当院でExtracorporeal membrane oxygenation (ECMO) 導入に至った重症COVID-19患者を受け入れ,当部にもリハビリテーション実施の依頼があった.多職種・多部門間での連携を積極的に取りながら,医師・看護師を介して早期から非直接的にリハビリテーションを提供した.Polymerase chain reaction (PCR) 検査の陰性確認後は直接的介入を開始し,運動療法だけでなく,直接飛沫に十分注意を払いながら呼吸理学療法も実施した.多職種が連携することで,院内での感染拡大を防ぎつつ,シームレスなリハビリテーションを提供することができ,スムーズに自宅復帰へとつなげることができた. この報告が今後のリハビリテーション実施医療施設におけるCOVID-19対策の一助になれば幸いである.
著者
皆田 渉平 工藤 元輝 安部 優樹 今岡 信介
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-7, 2022-03-01 (Released:2022-09-27)

【はじめに】 約6ヶ月間の透析中運動療法が継続可能であった外来透析患者10例を対象に運動療法の効果を検証することを目的とした. 【対象と方法】 対象は,2019年4月から2019年12月までの期間に外来透析患者の内,透析中運動療法を実施した連続19例において,約6ヶ月間継続できた10例を対象とした. 介入前後における基本情報,血液検査,血管機能検査,身体機能評価を後方視的に調査した. 【結果】 約6ヶ月介入経過においてAlbumin,Total cholesterol,HDL cholesterolの項目において有意に低下した.身体機能検査は,握力が有意に改善した.透析中運動療法時の有害事象は認めなかった. 【結論】 透析中の運動療法は低負荷のレジスタンストレーニングにて身体機能の維持,向上に繋がる可能性が示唆された.
著者
有馬 奈穂 安藤 将孝 川井 康平
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.20-26, 2022 (Released:2022-09-27)

【はじめに】Extension thrust pattern と Recurvatum knee pattern を有する脳卒中片麻痺患者に対する,歩容改善を目的とした課題指向型アプローチの有効性について報告する. 【症例提示】アテローム血栓性脳梗塞(左尾状核~被殻)により入院した 50 歳代女性.発症から,66 日経過.歩行は見守りレベルであったが,Extension thrust pattern とRecurvatum knee pattern といった歩容の課題を認めた. 【方 法】Gait Solution Design(以下 GSD と称す)を使用した T-cane 歩行練習や筋力増強練習と併せて,動作学習理論に基づいた各歩行相における Step 練習を 2 ヶ月間実施した.効果判定として三次元動作解析装置および床反力計を用いて,関節角度,関節モーメントを算出し,介入前後で比較した. 【結 果】立脚中期における麻痺側膝関節伸展・麻痺側股関節伸展モーメントが増加し,体幹伸展,麻痺側足関節背屈・麻痺側膝関節屈曲角度の拡大を認め,Extension thrust pattern の改善を認めた.また,前遊脚期における麻痺側立脚後期の股関節屈曲モーメントが増加し,体幹・麻痺側股関節伸展角度,麻痺側足関節背屈・麻痺側膝関節屈曲角度の拡大を認め,Recurvatum knee pattern の改善を認めた. 【結 語】個々の問題点に対して,課題指向型アプローチを実践し,体幹・股関節などの Passenger Unit が安定したことで,歩容改善に繋がった.
著者
紙谷 浩喜 佐藤 雄太 藤本 邦洋 梅木 駿太 古原 岳雄 七森 和久
出版者
公益社団法人 大分県理学療法士協会
雑誌
大分県理学療法学 (ISSN:13494783)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-5, 2020 (Released:2020-07-10)
参考文献数
8

【目的】 地域包括ケア病棟における入院患者において,生活機能の改善が高い患者と低い患者において,患者の転帰先に影響を与える要因と担当理学療法士・作業療法士が行った対応方法に関して質的研究法を用いて調査すること.【対象】 対象は2017 年6月~ 2018 年1月に,在宅から入院し当院の地域包括ケア病棟から退院した患者409 名のうち除外基準を満たした202 名とした.【方法】 病院環境におけるFIM 運動項目(以下,mFIM)からFIM effectiveness(以下,emFIM)を算出した.全群におけるemFIM の中央値より高い者を生活機能改善率が高い,中央値より低い者を生活機能改善率が低いと定義した.退院先が自宅でありemFIM が低いもの(以下,自宅低emFIM 群)と,退院先が施設でありemFIM が高いもの(以下,施設高emFIM 群)を調査対象とした.転帰先の決定に重要であった要因と対応方法について担当セラピストより聴取し,分類した.【結果】 自宅低emFIM 群は67 名であった.67 名の転帰先に関する特徴は3種類に分類できた.①病院環境ではemFIM が不十分だが自宅生活が可能な者,②手すりや歩行補助具など物的環境調整によってemFIM が十分となった者,③物的環境を調整してもemFIM が不十分であるが本人や家族の強い希望により自宅に退院した者であった.施設群高emFIM 群2名であった.2名のうち1名は家族関係が不仲,1名は入院前生活以上の介護負担を負えないと家族が判断した.【考察】 自宅低emFIM 群67 名のうち,約9割は適切な物的環境で課題となる動作の評価が重要であった.物的環境,人的環境のいずれにおいても,早期から医療者と当事者の認識の誤差を埋めるような関わり方が重要だと思われる.