- 著者
-
有馬 靖佳
- 出版者
- 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
- 雑誌
- 日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.1, pp.12-26, 2014 (Released:2014-01-17)
- 参考文献数
- 80
Natural killer(NK)細胞は自然免疫を担う一員であるが,実は系統的に見ると獲得免疫を担うB 細胞やT細胞の出現より遙かに後になって出現している。そのため免疫細胞として洗練されており,自己免疫疾患の原因になることは滅多にない。同種造血細胞移植という人為的環境下で,ドナーNK細胞は,キラー細胞免疫グロブリン様受容体(Killer Cell Immunoglobulin-like Receptors,KIR) を用いて, レシピエントのヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen,HLA)を認識する。それゆえ移植片対白血病(graft versus leukemia,GVL)効果に期待したKIR不一致移植が行われるが,結果は一長一短である。それは,HLAや免疫抑制剤や疾患の違い,ドナーソース,NK 細胞の状態(抑制化,活性化,ライセシング)など様々な要因が関与するからである。一方,日本人に限れば,KIR ハプロタイプがA に,HLA-C がgroup1に偏っており,それを移植成績予想や適切なドナー選択に活かす必要がある。KIR とHLAの多面性や最新の知識を総括し,最適なドナー選択の一助となることがこの総説の目標である。