著者
服部 敏良
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.611-648, 1936-07-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
49

「アドレナリン」ト「ヒスタミン」ノ兩者ガ心臓・血管系其ノ他諸種機能ニ封シ拮抗的ニ作用スルモノナルコトハ多數諸家ノ研究ニ濁リ明カナルトコロナレドモ, 胃液分泌作用ニ及ボス兩者ノ關係ニ就イテハ諸説アリテ未ダー致セザルノ憾アリ。依ツテ余ハ臨牀的竝ビニ實験的ニ兩者ノ胃液分泌作用ニ及ボス影響チ檢シ, 併セテ「アドレナリン」ノ作用機繭テ追求セルニ, 「アドレナリン」ハ人體竝ビニ正常犬胃ニ於イテハ或ハ抑制的ニ或ハ亢進的ニ作用スルモ迷走神経切斷犬胃ニ於イテハ抑制的ニ作用シ, 大及ビ小内臓神経切蜥犬胃ニ封シテハ時ニ抑制的ニ, 時ニ亢進的ニ作用スルテ認メ, 更ニ迷走紳経竝ビニ大及ビ小内臓神経切断犬胃ニ於イテハ殆ド影響チ及ボサ弱レテ認メ, 「アドレナリン」ハ大及ビ小内臓神経ニ作用シ胃液分泌テ抑制スル作用アルト共ニ又迷走神経ニモ作用シ, 時ニ分泌亢進チ來タスモノニ非ズヤトノ知見チ得タリ.而シテ「アドレナリン」ト「ヒスタミン」チ同時ニ注射スルトキ胃液分泌ニ及ボス影響チ見ルニ, 其ノ胃液分泌量・酸度トモ兩者ノ和ニ非ズシテ「ヒスタミン」單猫注射ノ場合ニ比シ減少セノレチ認メ, 又兩者チ交互ニ種々ノ時間的關係ニ於イテ使用スルニ「アドレナリン」ハ「ヒスタミン」ノ作用チ助長セズシテ寧ロ之レチ抑制シ, 「ヒスタミン」モ亦「アドレナリン」ニョル分泌量テ抑制スノレモノナルコトテ認メ, 「ヒスタミン」ト「アドレナリン」ハ胃液分泌機能ニ封シテモ亦他ノ機能ニ封スルト等シク拮抗作用チ呈スルモノナルコトチ認メタリ. 而シテ此ノ兩者間ノ拮抗作用ハ略々2時間ニシテ消失スルモノナルコトヲ知レリ.