著者
牛島 千衣 岡村 建 中埜 杏奈 武田 あゆみ 緒方 徹 今村 明秀 望月 直美 山永 義之
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.691-700, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
28

目的:健診における甲状腺超音波検査(ultrasonography: US)の成績,特に腫瘤性病変の特徴を検討した.方法:2018年4月1日から1年間にUSを実施した未治療の5,714例(女性3,971例,男性1,743例,平均年齢51.3±10.5歳)を対象とした.検出した腫瘤の最大径を計測,個数については単発と2個以上の多発に分類し,びまん性病変(腫大,不均質,粗雑など)の合併についても検討した.結果:2,333例(40.8%)に何らかの所見―充実性腫瘤1,551例(27.1%),嚢胞性病変1,002例(17.5%),びまん性病変467例(8.2%)―を認めた.二次検診の結果が判明した136例中,バセドウ病3例(0.1%),慢性甲状腺炎38例(0.7%),甲状腺乳頭癌9例(0.2%)であった.腫瘤性病変についてさらに検討すると,腫瘤径は対数正規分布を示し(p<0.0001),平均±2SDは6.8(3.2~14.6)mm,1,054例(68.0%)は単発,497例(32.0%)は多発性で,嚢胞性や腫大など随伴所見を527名に認めた.多発性または>20mmの腫瘤が高頻度に随伴所見を伴った.年齢とともに腫瘤が存在する頻度や多発する頻度が上昇し,その傾向は特に女性において顕著であったが,腫瘤の最大径は年代別差を認めなかった.結論:USにて27.1%の高頻度に充実性腫瘤を検出し,0.2%に乳頭癌を認めた.腫瘤の最大径は対数正規分布し,加齢とともに頻度と数は増すが増大傾向は認めず,環境や加齢に伴う非増殖性の変化である可能性が示唆された.20mm以上の腫瘤形成は約1.2%と高頻度ではなかった.
著者
望月 直美 小林 正夫 西大路 賢一 宮田 正年 宇野 耕治 桂 奏
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 = Journal of gastroenterological cancer screening (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.557-563, 2013-09-15
参考文献数
19

症例は61歳, 男性。人間ドックの上部消化管内視鏡検診で胸部中部食道に長径約2cmの隆起性病変を認めた。中心部には陥凹を認めたが, 辺縁部は既存の上皮に覆われており粘膜下腫瘍様形態であった。生検組織で免疫染色上クロモグラニンAとシナプトフィジンが陽性であり, 食道内分泌細胞癌と診断した。超音波内視鏡検査の結果, 食道外膜への浸潤を認めた。また多発肝転移を認め, StageIVbであった。化学療法としてCPT11/CDDPおよびVP-16/CDDPを行ったが, 9か月後に永眠された。食道内分泌細胞癌は進行が速く, 予後はきわめて不良である。稀な疾患であるが, 診断のためには臨床的特徴を把握しておくことが重要である。
著者
望月 直美 小林 正夫 西大路 賢一 釜口 麻衣
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.545-555, 2014 (Released:2014-10-15)
参考文献数
16

人間ドックで胃がんリスク評価(ABC分類)を実施した。対象は1223例, 平均年齢は56.3歳であった。A群が全体の61%でA群の割合は年代が上がるにつれ低下した。同時に実施した内視鏡検診でC群から3例, A群から1例の胃がんが発見された。いずれも年齢は65歳以上で内視鏡的に胃粘膜の萎縮は高度であった。ABC分類の結果と内視鏡的胃粘膜萎縮度を比較した結果, A群の13.9%は内視鏡的に萎縮を認める, いわゆる「偽A群」であった。内視鏡的に萎縮を認めない真のA群と比較すると, 「偽A群」では60歳以上, およびHp抗体価3.0U/ml以上の症例が有意に多かった。「偽A群」のうち高度の胃粘膜萎縮を有する20例はPGI低値, Hp抗体価3.0U/ml以上の両方, あるいはいずれかに合致し, Hp既感染, または現感染が考えられた。胃がんリスク評価を正確に行うため, 初回は内視鏡による画像診断を併用することが望ましい。