著者
廣瀬 肇 望月 高行
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.274-282, 2005-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2

最近経験したWallenberg症候群の1例を中心に耳鼻咽喉科医としての立場から嚥下障害とその対策について考察した。今後, 脳血管障害の頻度の増加が予想されWallenberg症候群に直面する機会も稀ではないと考える。本症の病態をよく理解し, 適応があれば積極的な手術的治療に踏み切る必要があり, その手技についての知識と経験を備えていくことが耳鼻咽喉科専門医に求められるところである。嚥下障害の病態は複雑であり, その対策にあたっては, 学際的アプローチに加え患者の家族の理解と協力が不可欠である。各医療施設においても, 耳鼻咽喉科医をはじめ, 各科の医師およびコメディカル専門職員の協力に基づくチームアプローチによって嚥下障害診療の実をあげていくことが肝要である。嚥下機能の改善は患者のQOLの向上に直結するもので, 耳鼻咽喉科医として今後ますますこの問題に積極的に取り組んでいくべきである。