著者
朝倉 彩 小出 慧
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-002, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】90度側臥位では臀部体圧が上昇するとされ、褥瘡予防の姿勢には適さないが、臨床上必要となることがある。先行研究において股関節や膝関節角度により背臥位や30度側臥位の体圧が変化することが報告されており、90度側臥位においても股関節角度を変化させることで体圧は増減するか検討した。【方法】対象は健常成人男性10名(24.1±1.5歳)を対象とし、測定体位は右90度側臥位、計測項目は右大転子部の体圧および全身接地面積とした。両側股関節屈曲位(以下、両側屈曲位)と、クッションを用い左股関節内外転中間位とし、右股関節屈曲0から20度とした肢位(以下、左下肢除圧位)に設定し、股関節屈曲角度を30度、60度、90度に設定した。体圧測定には、体圧検知センサSRソフトビジョン全身版(住友理工株式会社)を使用した。 統計処理は、3回の測定の平均値を代表値とし、同じ角度での両側屈曲位と左下肢除圧位のそれぞれの差を対応のあるt検定を用い検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS(IBM社製)を使用し、有意水準はそれぞれ5% 未満とした。本研究はヘルシンキ宣言に則り実施した。【結果】大転子部の圧は、左下肢除圧位は両側屈曲位と比較し屈曲90度でのみ、有意に減少した(p<0.05)。【考察】90度側臥位にて非接地側の股関節屈曲角度を増加させると、下肢の質量中心が体幹質量中心から離れることで骨盤の接地側への回旋モーメントが生じ、下肢にかかる荷重量が増加したと考えられる。両側屈曲位では左下肢の荷重を右下肢で支えるため、大転子部の体圧が増加したと考えられる。左下肢除圧位では、右下肢にかかる荷重はクッションにかかる。そのため体圧が減少したと考えられる。以上から、90度側臥位を行う際は、非接地側の股関節を屈曲させるほど対側下肢に荷重が移り、それをクッション等で支える事で大転子部の体圧が軽減できることが示唆された。