著者
篠塚 真充 小林 久文 小山 晴樹 竹内 大樹 植谷 岳郎
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-076, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】夜間痛を呈する肩関節疾患の治療において夜間痛を把握し,介入の負荷量を調整することが重要となる.しかし,臨床における夜間痛の主観的な把握では治療方針の決定に苦慮することがある.近年,夜間痛を客観的に評価する指標として,前上腕回旋動脈(AHCA)収縮期血流速度(PSV)に着目されている.【目的】夜間痛を呈する腱板断裂例に対し,AHCA血流速度に着目し,夜間痛の増減に合わせて負荷量を調整することで良好な治療成績を得たため報告する.本報告はヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得た.【対象・方法】66歳女性.AHCAのPSVは夜間痛出現時と減少時(出現時から17日後),再燃時(27日後),再減少時(41日後)の4期で超音波診断装置(US)のpulse doppler modeを用いて測定した.夜間痛の分類には,林らの分類を用い,疼痛,機能評価にはVisual Analog Scale(VAS)・DASHscoreを用いた.理学療法は夜間痛出現時に就寝時ポジショニング指導・icing指導を行い,減少時に肩関節周囲筋のリラクゼーションを実施し,再燃後,再度icingを指導した.【結果】夜間痛出現時は林らの分類でType3,VAS 1.5,PSV 28.4cm/s,DASHscore 20.5/100,減少時は林らの分類Type2,VAS 0.5,PSV 15.9cm/s,再燃時は林らの分類Type4,VAS 9.5,PSV 22.3cm/s,DASHscore 14.1/100,再減少時は林らの分類でType1,VAS 0,PSV 12.2cm/s,DASHscore 13.3/100であった.【考察】多田らは腱板断裂症例に対する夜間痛有無のAHCA PSVのCut off値は20.5cm/sと報告している.今回,USを用いることで夜間痛を客観的かつ経時的に観察し治療介入を選択した.その結果,夜間痛が減少したため適切な治療が選択できたと考えた.
著者
木村 遊 大野 敦生 豊田 裕司 高須 孝広 下川 翔平
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-001, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】本症例は肩関節初動時に放散痛と挙上最終域で衝突感を訴えていた.この原因が頚部の椎間関節障害によると仮説を立て介入を行い,改善が得られたため報告する.【症例】50代女性.平成31年1月に当院に受診し頚椎症,肩関節周囲炎と診断された.介入時は4月であり主訴は右肩関節挙上困難と運動時痛であった.【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,目的および方法を説明し同意を得た.【評価】疼痛:挙上初期から頚部右側〜右前腕尺側に放散痛(NRS7),挙上80°で衝突感(NRS4).筋緊張:僧帽筋上部線維,頭半棘筋の緊張亢進.肩関節ROM右:屈曲:80 °,外転:60 °.頚部ROM右:側屈:15 °.MMT(右/左):三角筋,棘上筋,上腕二頭筋(3 /4).整形外科テスト:Neer・Hawkins test,Spuring test右側陽性.動作観察:挙上運動で肩甲骨挙上,前傾が先行的に起こる.画像所見:頚椎MRI:C5 /6,C6 /7狭窄.【仮説】本症例の疼痛は筋力低下部位,頚椎MRIより椎間孔での狭窄によるものと考える.挙上困難な原因は椎間関節障害により主動作筋の筋力低下が生じ,大胸筋等で代償運動が出現した結果,ROM制限や衝突感が出現したと考えた.【治療】1.頚部筋緊張緩和2.頚椎モビライゼーション【結果】疼痛:放散痛消失,挙上110°で衝突感(NRS4).肩関節ROM右:屈曲110°,外転100°.頚部ROM右:側屈:30°.MMT(右/左):三角筋,棘上筋,上腕二頭筋(4 /4).整形外科テスト:Spuring test陰性.【考察】疼痛と挙上困難の原因は整形外科テストや主動作筋の筋力低下を生じていたことから神経根症状とインピンジメント徴候が考えられた.肩関節周囲炎が拘縮期に移行しており,ROMのEnd feelから軟部組織の伸張性が低下している.このことから上腕骨頭の骨頭偏位によりインピンジメント徴候が起こることも予想されるが,主訴である疼痛の質や部位がC5 〜C7神経支配領域であるため椎間関節障害の問題と考えた.
著者
小嶋 佑亮 鶴井 慎也 風晴 俊之 美原 盤
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-109, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】地域包括ケア病棟にはポストアキュートとサブアキュートの役割があるが、これからのわが国の診療提供体制から鑑みるとサブアキュートとしての役割が強く求められる。自宅から入院するサブアキュート患者は、何らかの原疾患および障害を抱えていることが多い。 これらの患者に対し入院中理学療法が介入し入院前のADL状況と変わらない状態になったにもかかわらず、自宅復帰できない場合は少なくない。そこで今回、非自宅復帰者の特性について比較・検討した。【方法】2017年6月から2018年12月に地域包括ケア病床に入院し、理学療法士が介入した275名のうち、自宅から直接入院した患者103名を対象とした。対象を自宅復帰と非自宅復帰の2群に分類し、入棟時・退棟時FIM、入院前のADL状況、入院前主な移動手段(歩行・車椅子)、入院目的疾患を調査、比較した。また自宅転帰できなかった患者の要因を調査した。【結果】入棟時・退棟時FIMにおいて運動項目および総点数は非自宅復帰群で有意に低かったが、両群ともFIM の有意な改善を認めた。入院前のADLにおいて非自宅復帰群は、なんらかの介助を要する患者が84.6%と自宅復帰群の50.0%に比較し有意に多く、入院前の移動手段が介助歩行、車椅子であった患者の割合も非自宅復帰群が53.8%で、自宅復帰群34.4%に比較し有意に多かった。 なお、非自宅復帰群は内科系疾患がほとんどで、新規に麻痺などの機能障害を呈した患者はいなかった。自宅転帰できなかった患者のうち、76.9%は家族の受け入れの問題があった。【考察】当該病棟に自宅から直接入院してくるサブアキュート患者のうち、入院前からADL動作能力が低い患者は、在宅転帰しにくいことが示された。理学療法士の努力によりADL能力の改善が図られても、家族の受け入れにより自宅転帰が阻害される。自宅復帰を促進するには家族への働きかけが重要である。
著者
長坂 嘉久 深谷 奎太 宮沢 千瑛里 吉原 光 宮田 義潤 小田部 夏子 糸数 昌史
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-020, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】発達性読み書き障害は,読み書きの能力が年齢,知能,教育の程度から期待されるレベルより低く,難聴や弱視を持たない場合である.また,先行研究より上肢関節位置覚は発達に伴う再現誤差の減少が確認されているが,手指動作評価はない.これらから書字に影響する関節位置覚評価が必要と考え,本研究では指間距離を赤外線センサを用いて計測し,発達に伴う関節位置覚の検討を行った.【方法】対象は、健常大学生21名,健常小学生23名(低学年児10名,高学年児13名),読み書き障害児9名とした.研究実施にあたり国際医療福祉大学研究倫理委員会の承認(承認番号15-T-13)を得た後に,対象者に十分な説明を行って同意を得た.指間距離は脳活計(ソフトシーデーシー)に接続した赤外線センサ(Leap motion)を用い,センサで得た手の空間座標から母指と示指間の直線距離を算出し,指間距離とした.計測肢位は座位とし,肩関節・肘関節を軽度屈曲した肢位で肘頭を机上の計測用台座に接地させ,前腕を台座に乗せセンサから約15cm上方に手が位置するよう固定した.計測運動は母指および示指のIP関節を伸展位を保持して母指と示指の指腹を近づける運動とした.計測は始めに母指と示指の最大距離を計測して開始肢位を設定し,その半分の距離を計測課題と設定した.計測課題の肢位(A)を5秒間記憶した後,手を開始肢位に戻し,次に記憶した肢位を再現させた(B).AおよびBの指間距離の差分の絶対値(|Δ|)を再現誤差と定義した.統計処理はJSTAT Ver16.1にて,Kruskal-Wallis検定と多重比較検定としてScheffe法を用いた.有意水準は5%とした.【結果】年齢が低くなるとともに,|Δ|は増加した.大学生と低学年児,大学生と読み書き障害児の間で有意な|Δ|の増加が認められた.【考察】先行研究と同様に指間距離においても,発達に伴う再現誤差の収束が認められ,発達に伴う手指などの関節位置覚の精度向上を反映していると考える.
著者
奥山 直己 伊東 優多 井上 彰
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-027, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】オーバーヘッドアスリートにおけるTOSは稀な病態ではないが、多彩な症状を呈するため診断が困難である。TOSはリハビリテーションなどの保存療法が第一選択であるが、罹病期間が長ければ長いほど手術成績は劣ることが報告されているため、早期発見・治療が望ましい。一般的にTOSの診断に徒手検査が行われるが、偽陽性率が高いことが報告されている。高校野球選手におけるTOS検診の報告は散見されるが、問診や徒手検査のみの評価である。我々は野球選手に対するメディカルチェック(MC)を超音波検査機器を用いて斜角筋三角底辺間距離、腋窩動脈血流速度を評価している。今回、MCの調査結果を報告する。【方法】対象は中学野球選手111名とした。理学所見はRoos、Wright、Morleyの各誘発テスト、問診は肘肩痛の有無、エコー評価は腋窩動脈1st partの血流速度(上肢下垂位、ABER位、挙上位)、斜角筋三角底辺間距離とした。現在肘肩痛を有し、Roos testが60秒以上継続不可、wright testが陽性、腋窩動脈血流速度がABER・挙上位いずれかで途絶、斜角筋三角底辺間距離8mm以下の5つの項目全て当てはまる者をTOS疑いとして受診を促した。【結果】肩肘痛を有していた者は4名(3.6%)、Roos test 陽性者は21名(18.9%)、Wright test陽性者は16名(14.4%)であった。腋窩動脈血流速度が0cm/secとなった選手はABER位で4名(3.6%)、挙上位で11名(9.9%)であった。 斜角筋三角底辺間距離8mm以下は48名(43.3%)であった。5つの項目に当てはまる者は111名中2名(1.8%)でありTOSが疑われ受診を促した。1名は保存加療にて競技復帰し1名は手術を要した。【結論】中学生野球選手のTOS有症率は1.8%であり、エコー評価が有用であった。今後はTOS検診においてTOS発症を予測できるか前向きに調査を行う必要がある。
著者
大塚 貴司 伊藤 貴史 石井 健史 寺島 優
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-024, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】回復期病棟の脳卒中片麻痺者(以下,片麻痺者)は,車椅子での生活を余儀なくされている.そのため入院中の片麻痺者は活動量が低下することが予測される.廃用症候群の予防という観点からも,片麻痺者自身が車椅子を駆動し移動することが重要である.しかし,片麻痺者の車椅子駆動は非麻痺側のみで行われ,麻痺側の運動が得られにくいことに加え,非対称性の姿勢を助長するデメリットがある.関矢らは,麻痺側の下肢も使用する足漕ぎ車椅子を用い,歩行速度の改善,下肢交互運動獲得が可能であることを示唆している.そこで,今回,足漕ぎ車椅子を使用し麻痺側の筋活動を向上させることにより,麻痺側の下肢機能へどのような影響を及ぼすか一症例にて検討することとした.【方法】本症例は,被殻出血により右片麻痺を呈した60 代男性であった.Brs:上肢Ⅱ・下肢Ⅲの運動麻痺を認めていた.運動性失語を認めるが指示理解良好であった.入院時の移動能力は,モジュラー型車椅子を使用していた.研究デザインをABA法とし,通常の運動療法前に自主練習として,病棟にて方向転換を含む車椅子自操を10分間,A期はモジュラー型車椅子,B期は足漕ぎ車椅子とし,各期間7日間施行した.アウトカムとして,車椅子走行距離,下肢荷重率,FACTを施行した.本研究はヘルシンキ宣言に沿って対象者の倫理的配慮を行った.【結果】結果は,走行距離(7日間の平均):A期52.9m,B期300m,A’期116.3mであった.下肢荷重率(Kgf/Kg)とFACT(点)(初期/ A期後/ B期後/ A’期後)は, 0.26/0.27/0.33/0.27および7/8/13/13であった.【考察】今回,足漕ぎ車椅子駆動を行った結果,下肢荷重率・FACTの上昇を認めた.ペダリングにより座位での麻痺側足底への荷重率が増大し静的座位バランスが安定したと考えた.これにより座位における支持基底面内の重心移動が可能になったと考えた.病棟における足漕ぎ車椅子駆動は麻痺側下肢の筋収縮を促し廃用症候群の予防,座位でのADL拡大に寄与すると考えた.
著者
川井 祐美子 吉本 真純 坂田 佳成 天野 喜崇 金子 貴俊 宮本 梓
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-058, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】先行研究において,足関節背屈運動に伴い遠位脛腓関節(以下,DTFJ)が離開することや足関節内反捻挫による不安定性がDTFJの離開と関係すると報告されているが,足関節背屈に伴うDTFJの離開距離については明らかになっていない.本研究の目的は,足関節の前方不安定性がDTFJ離開距離に与える影響を明らかにすることである.【方法】対象者は大学生30名(左右合計60肢)とした.評価項目は,足関節背屈可動域,背屈0°のDTFJ離開距離,最大背屈位のDTFJ離開距離,前方引き出しテスト(以下,ADT)とした.DTFJ離開距離の測定は超音波断層撮影装置(TOSHIBA社製Nemio XG SSA-580A)を使用した.計測後,最大背屈離開距離と0°離開距離の差(以下,開大距離)を算出した.統計処理は足関節背屈0°のDTFJ離開距離および最大背屈位のDTFJ離開距離と足関節背屈可動域との関係性についてピアソンの積率相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】所属施設の倫理委員会にて承認を得た.参加者に十分な説明を行い,書面にて同意を得た.【結果】ADTは陰性48脚(以下,陽性群),陽性12脚(以下,陰性群)であった.陽性群,陰性群ともに背屈0°離開距離と開大距離の間に有意な負の相関を認めた(陰性群:r=-.34.p<.05,陽性群:r=-.73,p<.05).陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めた(陰性群:r=.47,p<.05)が,陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に相関を認めなかった.また両群とも開大距離と背屈可動域の間に有意な相関を認めなかった.【考察】陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めたが陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な相関を認めなかった.この要因として足関節前方不安定性による距腿関節のマルアライメントが背屈に伴うDTFJの開大に影響していると考えられる.よって陽性群においてDTFJ開大制限が生じていること示唆された.
著者
朝倉 彩 小出 慧
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-002, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】90度側臥位では臀部体圧が上昇するとされ、褥瘡予防の姿勢には適さないが、臨床上必要となることがある。先行研究において股関節や膝関節角度により背臥位や30度側臥位の体圧が変化することが報告されており、90度側臥位においても股関節角度を変化させることで体圧は増減するか検討した。【方法】対象は健常成人男性10名(24.1±1.5歳)を対象とし、測定体位は右90度側臥位、計測項目は右大転子部の体圧および全身接地面積とした。両側股関節屈曲位(以下、両側屈曲位)と、クッションを用い左股関節内外転中間位とし、右股関節屈曲0から20度とした肢位(以下、左下肢除圧位)に設定し、股関節屈曲角度を30度、60度、90度に設定した。体圧測定には、体圧検知センサSRソフトビジョン全身版(住友理工株式会社)を使用した。 統計処理は、3回の測定の平均値を代表値とし、同じ角度での両側屈曲位と左下肢除圧位のそれぞれの差を対応のあるt検定を用い検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS(IBM社製)を使用し、有意水準はそれぞれ5% 未満とした。本研究はヘルシンキ宣言に則り実施した。【結果】大転子部の圧は、左下肢除圧位は両側屈曲位と比較し屈曲90度でのみ、有意に減少した(p<0.05)。【考察】90度側臥位にて非接地側の股関節屈曲角度を増加させると、下肢の質量中心が体幹質量中心から離れることで骨盤の接地側への回旋モーメントが生じ、下肢にかかる荷重量が増加したと考えられる。両側屈曲位では左下肢の荷重を右下肢で支えるため、大転子部の体圧が増加したと考えられる。左下肢除圧位では、右下肢にかかる荷重はクッションにかかる。そのため体圧が減少したと考えられる。以上から、90度側臥位を行う際は、非接地側の股関節を屈曲させるほど対側下肢に荷重が移り、それをクッション等で支える事で大転子部の体圧が軽減できることが示唆された。
著者
斎藤 広志 小尾 尚貴 山田 祐子 竹内 大樹 兼岩 淳平 多田 智顕
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-025, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】超音波検査は体表から触知できない深層を可視化でき、患者へ与える負担が少ない検査法である。 今回肩挙上時に疼痛を訴える肩関節周囲炎患者に対して、理学療法評価に超音波診断装置を用いて機能評価、治療介入を行った症例を経験したので報告する。【症例】40代女性。2018年12月更衣動作で受傷し、右肩関節周囲炎と診断。【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に沿い発表目的を説明し同意を得た。【初期評価】右肩ROM自動屈曲100°他動屈曲160°外転90°であった。整形外科的テストはNeer Test陽性。上腕骨頭の超音波動態評価で、肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。Horizontal Flexion Test 陰性であった。肩甲胸郭機能はElbow Push Test陽性。 MMTは肩甲骨外転・上方回旋3肩甲骨下制・内転3であった。JOAスコア67点であった。【理学療法経過】超音波動態評価で肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。また、結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。評価上から肩甲胸郭関節機能障害を認めた。以上評価結果から肩甲胸郭関節機能障害から肩峰下インピンジメントが生じていると判断して、肩甲胸郭関節機能に対し理学療法を実施した。理学療法プログラムは前鋸筋トレーニング、小胸筋ストレッチ、側臥位で肩関節外転運動を実施した。 4週間理学療法を実施し、右肩ROM自動屈曲175°外転170°に改善した。Neer Test陰性、超音波動態評価の肩関節外転時の肩峰と大結節の衝突も消失した。MMTは全項目で改善を認めた。肩挙上時痛消失し、JOAスコア97点と改善した。【考察】超音波動態評価から上腕骨頭の動態を可視化することで、肩甲胸郭機能に対しての治療を立案でき、疼痛と可動域が改善したと考える。
著者
若林 航輝 石井 文弥 棚橋 由佳 櫻井 敬市 大竹 弘哲
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-025, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】脳梗塞により右片麻痺,構音障害を呈した症例に対し,建築業への復職を目標に,片脚立位を中心とした立位バランス能力に着目して,腹斜筋群の活動を向上させる座位リーチ練習を実施した.その結果,立位バランス能力の改善に至ったので報告する.【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づいて十分に説明し,同意を得た.【症例紹介】60代男性.MRIにて左内包後脚から放線冠にかけて微小梗塞が認められ,右片麻痺,構音障害を呈した.病前ADLは自立.HOPEは復職したい,不安定な足場でも歩けるようになりたい.第2,3病日ではBrunnstrom Stage(以下Brs)は上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅴ.感覚は右上下肢触覚軽度鈍麻,深部感覚左右差なし.立位バランスとして,片脚立位は右側3.0秒保持可能,左側保持困難.Berg Balance Scale(以下BBS)42点.Timed Up and Go(以下TUG)右回り10.8秒,左回り10.9秒.歩行は独歩見守り,ワイドベースであり,右足底全面接地.立脚中期に体幹・骨盤帯が右側へ過剰に偏位.【方法】第2 〜6病日では、低緊張筋群に対し,四肢の運動やROM練習を行った.BBS・TUGは改善傾向であったが,片脚立位は介入前後で変化は認められなかった.第7病日より,腹斜筋群に着目して座位リーチ練習を実施した.練習前後で片脚立位保持時間の延長を認めたため,プログラムに追加した.その他に,座位リーチ練習の際に股関節屈曲を追加することで課題難易度を調整し,練習を継続した.【結果】第13,14病日では片脚立位保持時間(R /L,秒)は19.0 /7.0まで改善し,BBS 54点,TUG 右回り7.1秒,左回り7.5秒となった.歩行は右踵接地みられ,右立脚中期での体幹右側偏位は軽減した.【考察】片脚立位は転倒に関連する指標として知られて いる.四肢の運動やROM練習では改善が認められなかったが,腹斜筋群に着目して座位リーチ練習を行うことで片脚立位保持時間の即時的・経時的変化を得られたためその有効性が示唆された.
著者
田中 博之 小野 達也 西﨑 香苗 池上 仁志
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-059, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】健常者の立ち上がり動作には股関節が100° 以上屈曲することが報告されており、THA等により股屈曲制限が生じている患者では、健常と異なるパターンで立ち上がることが推察される。本研究では、股屈曲制限下での立ち上がり動作の筋電図学的特徴を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は健常男性10名(平均年齢26.8±4.1歳)とした。運動課題は、下腿長と同じ高さの座面からの立ち上がり動作とし、股関節装具による股屈曲90°制限下での立ち上がり(以下制限あり群)・装具なしの立ち上がり(以下制限なし群)を各3回施行した。左前脛骨筋、中殿筋、大殿筋、腹直筋等に電極を貼付し、課題遂行時の筋活動および徒手筋力測定に準拠した最大随意収縮(以下:MVC)を表面筋電図計で記録した。立ち上がり動作を3相に分け、MVCより各相の%MVCを算出した。 統計は対応のあるt検定を用いた(p<0.05)。【結果】第1相中殿筋は制限あり群2.8±1.6%制限なし群 1.84±1.0%(p=0.002),大殿筋は制限あり群2.6±1.8%制限なし群2.1±1.3%(p=0.04)であり、他筋に有意差はなかった。第2相は中殿筋が制限あり群1.8±1.0%制限なし群1.3±0.8%(p=0.03),前脛骨筋は制限あり群6.4± 4.3%制限なし群4.1±2.1%(p=0.02)であった。第3相に有意差はなかった。【考察】本検討より、股屈曲制限は、立ち上がり第1 〜2 相に影響することが明らかとなった。立ち上がり動作の初期相で生じる体幹前傾は下肢関節モーメントに影響するため立ち上がり動作において重要な要素であることが知られている。股屈曲制限下での立ち上がりは体幹前傾が減じるため、第1相では大殿筋、中殿筋による股関節外旋、第2相では前脛骨筋による下腿前傾を増大させて身体重心の前方移動を行ったと推察された。