著者
山口 美穂子 木下 大介 秋田 大輔 西村 陽
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.468-473, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
9

重篤な新生児の治療中止は重要な倫理的課題である.経口気管挿管下で退院し,自宅で看取りを行った症例を経験したので報告する.症例は正期産,出生体重約2,500g,Apgar score 0/0/0点.常位胎盤早期剥離のため緊急帝王切開で出生したが,重症低酸素性虚血性脳症に至った.両親は生後早期より人工呼吸器下での生命維持を望まず,自宅での看取りを希望した.両親・新生児科医師・看護師間及び院内臨床倫理委員会で協議し『自宅での看取り』は児の最善の利益となると考えた.生後1カ月半に経口気管挿管下で自宅へ退院し,永眠した.臨床倫理コンサルテーションや慎重な意思確認のプロセスを踏むことで看取りを支援できた.重篤な新生児を数多く経験するNICUにおいては,個々の症例における様々な可能性を両親・医療者を含めた多職種で慎重に検討し,児の最善の利益に繋げていく必要がある.