著者
富澤 晃文 木下 眞理 加藤 大典
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.617-623, 2004-12-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

人工内耳と補聴器を併用する聴覚障害児4名の聴取様態について, 両耳聴の観点から検討した。人工内耳側―補聴器側間では, 装用閾値だけでなくラウドネスの上昇特性も異なっていた。1kHzハイパス/ローパスフィルタによる両耳ひずみ語音検査の結果, 人工内耳側にハイパス語音, 補聴器側にローパス語音を呈示した際に, 両耳聴による聴取成績の向上が顕著にみとめられた。一方で, 逆の帯域フィルタ条件における聴取成績は低く, 語音聴取においては, 人工内耳側は高音域に, 補聴器側は低音域に優位であることが分かった。主観的な日常のきこえについては, 3名が両デバイスを併用した方がよくきこえると評価していた。これらの結果は, 人工内耳と補聴器の音情報が異質であるにも関わらず, 両耳への併用によって単一の音韻が知覚されたことを支持した。両デバイスの併用を好む聴覚障害児においては, 両耳融合が生じていたと考えられる。