- 著者
-
三木 恒治
前田 修
細木 茂
木内 利明
黒田 昌男
宇佐美 道之
古武 敏彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.83, no.11, pp.1789-1794, 1992-11-20 (Released:2010-07-23)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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大阪府立成人病センター泌尿器科における stage I 精巣セミノーマの治療成績を検討し, 予防的放射線療法を行わない surveillance の適応について考察した. 1962年から1990年末迄に当科において治療を行った stage I 精巣セミノーマ50例を対象とし, その再発率, 再発部位, 予後などを検討した. 27例は予防的放射線療法を行い (RT群), 1986年以後の23例は予防的放射線療法を行わない surveillance のみとした (S群). RT群では1例 (3.6%) に除睾術後3ヵ月で肺に再発を認め死亡したが, 26例は全例再発なく生存している. 予防的放射線療法による副作用は, 照射時の一時的な食思不振のほかは認めなかった. 一方S群では2例 (8.7%) に除睾術後4ヵ月, 7ヵ月で後腹膜リンパ節に再発を認めたが, 2例とも化学療法にて完治した. 残りの21例は全例再発なく生存している (観察期間14~70ヵ月). 以上より再発率についてはRT群が低く, 肺のみの再発であり, 再発の検索は比較的容易である. しかし, シスプラチンを用いた有効な化学療法により, 予後について両者に差はなく, 十分な再発の検索が可能ならば, 今後 stage I 精巣セミノーマに対する surveillance 法は適応可能といえよう.