著者
豊田 裕貴 木戸 茂
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.89-100, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

本研究の目的は、QCA(質的比較分析)とMDSO-MSDOによる質的分析手法と、ソフトクラスタリングといった定量分析手法とを活用し、個々の顧客の差異を検討し、ブランドマネジメントに資する情報抽出方法を提案することにある。QCAは、ブール代数をもとにした集合論的方法である。本研究では、個々人のブランド評価構造の多様性と因果条件を明らかにする目的で応用する。もう一つのアプローチであるMDSOおよびMSDOとは、Most Different cases, Similar Outcome/Most Similar cases, Different Outcomeの頭文字からなる手法である。MDSOは「結果が類似しているグループ内で評価基準が最も異なるケース」を特定し、MSDOは「結果が異なるグループ間で評価基準が最も類似しているケースを特定する」ために用いられる。本研究では、対象となる顧客データの中から詳細に検討すべき対象を特定する目的に応用する。ただし、MDSO-MSDOアプローチでは、極端に変わった対象が抽出されてしまう可能性があり、特定された対象が深く検討すべき対象であるかという懸念が残る。この点に対しては、ソフトクラスタリングを用いて抽出された顧客と類似する個客がどれくらいいるかを確認することで対象の非特殊性を担保する手順についても提案する。