著者
木曾 克裕
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.521-528, 1994-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
25

1983年4月から1989年3月にかけて牡鹿半島周辺海域で漁獲されたサクラマス成魚の胃内容物を観察した。胃内容物組成を月別および尾叉長階級別に整理して個体数法, 重量法, 出現頻度法の3方法で表示し, これらの総合評価の一つの方法であるIRI (Index of Relative Importance) も併用して解析した。成魚の主な食物は大型プランクトンのニホンウミノミやツノナシオキアミ, 魚類のイカナゴ, カタクチイワシ, スケトウダラ稚魚, マイワシなどであった。重量と出現頻度では季節を問わず, 魚類が最も多く, 特にイカナゴは3~6月に卓越した。個体数では4月および5月にはニホンウミノミが多かった。大型個体と小型個体の食物を比較すると大型個体のほうが魚類への依存度が強く, 大型プランクトンへの依存の度合が低かった。サクラマス幼魚の食物と比較すると, 幼魚も成魚もイカナゴとニホンウミノミを主な食物としていたが, 成魚が摂っている動物の方が大型であった。そのほかの餌生物では, 成魚が外洋性の比較的大型の魚類とツノナシオキアミ, 幼魚が汽水性の魚類やThysanoessa longipes, カニ類幼生, ヨコエビ類などを摂っており, 両者の大きさに基づく捕食能力と微小棲息場所が異なることを示唆していた。