著者
木村 恭之
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.364-368, 1998-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9

鰓原性奇形 (側頸瘻, 耳瘻孔, 外耳奇形など) に聴力障害 (内耳奇形, 中耳奇形など), 腎奇形 (形成不全など) を特徴とする常染色体優性遺伝と考えられる疾患はBranchio-oto-renal syndromeと呼ばれているが, すべてを兼ね備えた症例は本邦では今までに4例である。われわれは, 右側頸瘻・右感音性難聴・腎奇形を呈した15歳男性の症例を経験し, 右側頸瘻に対し手術を施行した。側頸瘻の症例にはbranchio-oto-renal syndromeが含まれている可能性があるので常にこの疾患を念頭におく必要がある。この疾患に対する遺伝子的な解析が進み常染色体8番の長腕の遺伝子に問題があるところまでわかっている。
著者
木村 恭之 土定 建夫 塚谷 才明 作本 真 三輪 高喜 古川 仭
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.709-716, 1993-12-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

中枢性嗅覚障害で病変の局在がはっきりしている脳腫瘍10例を対象に臨床的検討を行った。自覚的に「正常」と答えた7例中, 実際に検査上正常だった症例はなかった。認知嗅力損失で左右差のあった症例が8例あり, 単鼻孔嗅検査は不可欠と考えられた。検知/認知の差が2.0以上あった解離現象を示した症例が5例あった。解離現象は第3次嗅覚中枢の障害の他に嗅覚の伝達情報量が不足した場合でも起こりうると考えられた。静脈性嗅覚検査では潜伏時間は正常で持続時間が短縮していることが特徴的であったが, この現象は病変の局在を反映するものではなかった。病変と同側性あるいは両側性に嗅覚障害が発症した例が多かったが, 必ずしも当てはまらない症例もみられた。これは頭蓋内は圧迫が他の部分に影響しやすく, 周囲には浮腫性病変も合併しやすいことと関連があると考えられた。