著者
木村 文佳 藤田 智香子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0489-A0489, 2008

【目的】<BR>現在、接遇教育を充実させる病院・施設が多く見られ、言葉遣いとしては敬語使用が推奨されているように思える。本研究では言葉遣いに着目し、理学療法士(以下PT )が実際使用している言葉遣い、患者が希望する言葉遣い、常体と敬体、方言と標準語で受ける印象の違いについて調査し、今後のコミュニケーションの一助とすることを目的とした。<BR><BR>【方法】<BR>平成18年9月7日~10月25日の期間、津軽地方のリハビリテーション科を有する病院5箇所で60歳以上の高齢入院患者(質問内容の理解困難な方、長谷川式簡易知能スケール20点未満の方を除く)を対象に、独自に作成した調査票を用い、20分程度の聞き取り調査を行った。質問内容として社会的属性(年齢、家族構成など)を尋ねたほか、挨拶や説明などの状況において患者が実際PTに言われている言葉遣い、希望する言葉遣いを尊敬語・謙譲語・丁寧語・常体から選択してもらった。また各言葉に対する印象を「よい、まぁよい、あまりよくない、よくない」から選択してもらい、津軽弁と標準語における印象の違いについても調査した。統計解析にはSPSS、解析方法としてΧ<SUP>2</SUP>検定を用い、p<0.05を有意水準とした。<BR><BR>【結果】<BR>52名にアンケート調査を実施し、有効回答数は43名(男性15名、女性28名、年齢74.0±7.9歳)だった。全項目で丁寧語を希望する人が最も多く、実際のPTの言葉遣いと希望する言葉遣いの間に関連性が認められた。言葉の印象に関しては、丁寧語を「よい」、「まぁよい」とする人が多かったのに対し、尊敬語に関しては「あまりよくない」とする意見が多く聞かれた。しかし、説明の場面では尊敬語の印象を「よい」と答えた人が多く見られた(37.2%)。方言の項目では、標準語希望者が36名(83.7%)だったのに対し、津軽弁希望者は6名(14.0%)、どちらでもよいと答えたのが1名(2.3%)だった。<BR><BR>【考察】<BR>丁寧語の希望者が最も多かったのは、日常的にPTから丁寧語で話しかけられていることが大きな要因だと考えられる。各項目で尊敬語の印象は「あまりよくない」が大半だったが、説明や依頼時などは尊敬語や謙譲語に対する印象をよいとする人が多かったのは、PTが動作主体となり患者がその受け手となるため、挨拶などに比べてより丁寧な応対が求められるのであろう。方言に関しては、標準語希望者が多かったが、「標準語と津軽弁どちらで理学療法を受けたいか」という問いには、津軽弁の回答(18名,42.9%)が約半数を占めた。このことから、語句としては標準語を望み、なまりや語法としては津軽弁を希望する傾向があると考えられる。<BR><BR>【まとめ】<BR>患者が希望する言葉遣いは主に丁寧語で、患者が受け手となるよう場面ではより丁寧な言葉遣いが求められることがわかった。