著者
木村 裕貴
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.93-106, 2022-10-31 (Released:2022-11-15)
参考文献数
21

本稿では,1990年代以降に結婚に関する意思決定を行った1960年代から1980年代出生コーホートの女性を対象に,稼得力が結婚形成および配偶者選択に及ぼす影響の変化を検証する.これを通じて,男性の経済的地位低下と女性の両立見込み増大のいずれが女性の稼得力と結婚行動の関連を変化させる主要因なのかを明らかにすることが本稿の目的である.稼得力として複数の指標を用いた分析の結果,1960年代から1970年代コーホートにかけて,女性の稼得力が結婚形成に及ぼす影響が負から正へと転じた一方,1970年代から1980年代コーホートではほとんど変化がなかった.配偶者選択に対する影響はいずれのコーホートでもおおむね正であるが,1960年代から1970年代コーホートにかけて効果が増大した.以上の結果は,男性の経済的地位の低下が女性の稼得力と結婚の関連を転換させる主要因であることを示している.